日本は巨額の対外資産を保有している。したがって、これを取り崩して復興資金に充てるという方法は、ごく自然で合理的なものだ。
日本の対外資産は、2009年末で554兆円ある。負債を差し引いた純資産では266兆円だ。他方、必要な復興投資は、16~25兆円程度だ。だから、復興資金のすべてを対外資産取り崩しで賄っても、純資産が1割程度減るだけだ。
日本は巨額の対外資産を保有している。したがって、これを取り崩して復興資金に充てるという方法は、ごく自然で合理的なものだ。
日本の対外資産は、2009年末で554兆円ある。負債を差し引いた純資産では266兆円だ。他方、必要な復興投資は、16~25兆円程度だ。だから、復興資金のすべてを対外資産取り崩しで賄っても、純資産が1割程度減るだけだ。
大震災から早くも1カ月が過ぎた。被災地の状況はやっとがれきの除去が進んだ程度で、本格的な復興が始まったとはとても言えない。福島原発事故収束のメドも、まだ立っていない。
しかし、復興のおおまかな方向づけは、できるだけ早く明らかにする必要がある。民間企業が損壊した生産設備を元の場所に再建するか、それとも他に移転するかは、それによって大きな影響を受けるからだ。
大震災後、為替レートがきわめて大きく変動した。
直後に海外市場で急激な円高が進み、東京市場でも3月16日に78.1円になった。ところが、18日の介入を契機に円安に転じ、その後さらに円安が進んだ。4月6日には85円台となっている。これは、震災直前の水準より円安だ。中期的に見ても、2010年夏以来の円安である。
大震災からの復興に必要とされる政策は、国民に負担を強いるものだ。供給面に制約が生じているからである。この点が、数年前に生じた世界経済危機との本質的な違いだ。
世界経済危機で日本が受けた打撃は、「輸出の激減」という需要面のものであった。これに対して必要な経済政策は需要の喚起であり、それは(少なくとも直接的には)、誰にも損失を与えずに実行できる。日本では、エコカー支援などの需要喚起策が取られた。それは、特定の業界を救済したという公平の問題を含んでいたが、経済全体としての負担増にはならなかった(本当は、社会資本整備のための公共事業を増やすべきだった。私は、「戦後初めてケインズ政策が必要な事態が生じた」と考えて、公共事業拡大を主張した。拙著『未曾有の経済危機克服の処方箋』第6章を参照)。
今回の大震災の復興と経済対応について、「復興投資が必要、円高を防ぐべし、増税すべきでない、消費を減らすべきではない」等々、さまざまな主張がなされている。
これらの1つひとつを個別的に取れば、もっともなものである。しかし、経済全体としての需要と供給は等しくなければならないので、これらすべてを満たすことはできない。
東北関東大震災によって、東日本で深刻な電力不足が発生している。
東京電力のプレスリリースによると、3月12~14日の期間で、同社の供給能力は3100万~3700万キロワットであり、ピーク時(18~19時)の想定需要量は3700万~4100万キロワットだ。つまり、供給能力は、ピーク時想定需要量を下回るか、あるいはぎりぎりの水準である。このため、計画停電が行なわれている。
未曾有の大惨事となってしまった東日本大震災の被害について、現時点(3月14日)では、詳細はまったくわからない。ただし、これまで経験したことのない甚大な被害が発生したことは間違いない。
人名以外の物的資産だけを取っても、阪神淡路大震災では10兆円程度の損害が生じたと言われる。今回の被害は、それを上回り、GDPの数パーセントに及んでいる可能性がある。日本はそれだけ貧しくなったわけである。だから、日本人の生活が平均的にそれだけ貧しくなるのは、不可避のことだ。
世界金融システムの主要な問題は、民間金融機関が抱える損失の処理から、国が抱える債務の問題にシフトした。
このことは、IMF(国際通貨基金)のGFSR(世界金融安定報告)に明確に表れている。この報告は金融危機の勃発以来、数回にわたって公表されてきたが、2010年10月からは、「ソブリンリスク」(国債のリスク)が主要なテーマとなっている。BIS(国際決済銀行)の年次報告にも、同様の問題意識の変化が見られる。
格付け機関S&Pが1月27日に日本国債の格付けを引き下げたのに続き、ムーディーズも、見通しを「安定的」から「否定的」に引き下げた。
日本国債に将来どのような問題が起こると予想されるだろうか?
上場企業の2010年4月~12月期の連結決算が出揃いつつあり、連結経常利益が前年同期に比べて増加したことが報じられている。また、通期業績を今後上方修正する企業が増えるとも言われる。しかし、ここ数年間は、経済危機によって企業利益が異常な低水準に落ち込んだ期間であった。だから、それとの比較で利益が増えても、格別驚くには当たらない。
問題は、回復の度合いである。とりわけ、次の2点だ。第1に、日本企業の利益回復は、他の先進国企業に比較してどうか。第2に、利益の回復は、売上の回復に見合ったものか。じつは、このいずれについても、問題がある。それが日本経済にとって何を意味するかを、以下に検討しよう。