トヨタのリコールが投げかける問題

トヨタ社の大規模なリコールが波紋を広げている。詳しい原因の究明はこれから行なわれるだろうが、現在の段階で推測できることもある。それは、急速な生産拡大の後遺症ではないかとの疑いである(ただし、トヨタ自動車側そうした可能性を否定している)。

トヨタの生産(乗用車と商用車の合計)の推移を見ると、海外生産の急拡大が注目される。2002年においては、国内生産349万台に対して、海外生産は216万台だった。ところが、海外生産は03年から05年において年率17%から18%いる驚異的な伸びを示した。06年、07年には伸び率がやや低下したが、それでも年率10%近い伸びを示した。このような高い伸び率は1970年代末以降の日本の国内自動車生産でもなかったことである(96年後半から97年前半にかけて対前年伸び率10%を超えたことがあったが、それ以外は10%を下回るのが普通だった)。

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再び失われる15年の入り口に立つ日本

この連載を始めた契機は、1995年の阪神淡路大震災だった。被災地でのパソコン通信の活躍ぶりについて本誌に書いたのがきっかけとなって、連載を始めることになった。それ以来15年間、今回で500回になった。ご愛読いただいた読者の皆様方に、心から御礼申し上げたい。

この間に世界は大きく変わった。中国の名目GDPは、95年から2008年のあいだに5.9倍になった。農業国が工業化したのだから、当然と言えば当然だ。しかし、成長したのは中国だけではない。先進国も成長した。アメリカの実質GDPは95年から09年のあいだに1.4倍に、平均株価は09年末までに2.7倍になった。イギリスの実質GDPは08年までに1.4倍に、株価は09年末までに1.8倍になった。それに対して日本の実質GDPは、08年までに16%増加しただけである。株価は09年末までに95年初の57%に落ち込んだ。

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中国政府と対決したグーグルに拍手

グーグルが中国と「戦争」状態に入っている。発端は、中国を発信源とする大規模なサイバー攻撃によって、中国人権活動家のGメールのアカウントが狙われたことだ。グーグルだけでなく、インターネットや金融など、広い分野にわたる20社以上の大企業がターゲットになっていた。

この攻撃に中国政府が関与している疑いがあることから、それに対する講義として、グーグルは、これまで中国で行なっていた自主規制を解除した。中国国内で「天安門事件」や「ダライ・ラマ」などの「危険な」キーワードで検索してもなにもヒットしなかったのだが、関連情報が得られるようになった。

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二重写しに見える日本航空と日本国

1996年に、この連載で日本航空(JAL)について書いたことがある(『無人島に持ってゆく本』、ダイヤモンド社、97年に収録)。その現行の最初では、60年代末の思い出を書いた。留学生としてアメリカに1人でいたとき、空港でJALの機体を見ると、強い誇りと安堵を感じたという思い出だ。

このことをあるイギリス人に話したところ、彼もBOAC(BAの前身。イギリスのかつてのフラッグキャリア)について同じ気持ちを持っていたと言った。ただし、日本人が抱いていた感情は、それより強かったと思う。なぜなら、日本は敗戦国であり、60年代における国際社会での位置づけは、イギリスとは比べものにならないほど低かったからだ。日本は、低開発国からやっと離陸したばかりの東洋の島国にすぎなかったのである。

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