ドルをめぐる世界資本取引の構造

これまで何度か述べたように、今起きている世界経済混乱の基本は、アメリカの対外経常収支赤字が持続可能なレベルを超えて拡大したことによる。以下では、この問題についての分析を行なおう。

1950年代から70年代までは、アメリカの経常収支は黒字の年が多かった。80年代になって赤字になり、86年、87年には経常収支赤字の対GDP比が3%を超えた(財政収支は60年代から赤字の年が多かったが、80年代になって赤字が顕著になり「双子の赤字」といわれた)。しかし、80年代末からは経常収支赤字は縮小し、91年には黒字になった。その後再び赤字が傾向的に拡大し、対GDP比は98年約2%、99年約3%、2000年約4%と高まり、06年には6%近くにまでなった。額で言えば、99年には2739億ドルであったが、06年には7716億ドル、07年には7186億ドルである(計数は国民経済計算ベース。以下同)。

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われわれは生活防衛策を真剣に考える必要がある

前回のこの欄で、石油ショック時の政策対応と現在を比較した。そして、1970年代に比べて、現在の日本の政策形成能力が劣化していると述べた。

原稿の校正を終えた時点で、その内容を実証する事態が現実に生じてしまった。福田康夫首相の突然の辞任表明である。

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70年代石油ショック時のイギリスをなぞる日本

1970年代の石油ショックへの対応において、日本が世界で最も優れた成果を上げたことは、よく知られている。その原因としては、賃金上昇率を抑制できたこと、省エネが進んだことが通常指摘される。

これらは事実であるが、原因はそれだけではない。円高を容認したことも大きな原因だ。なぜなら、この連載でこれまで強調してきたように、石油価格の上昇とはドル建て価格の上昇であり、為替レートいかんによってはアメリカ以外の国が被る影響は異なるものになるからだ。

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世界経済はドルの新しい価値水準を模索している

世界経済を見るときに通常使われる価値の基準は、ドルである。われわれは、この方式に慣れてしまったため、今生じていることを「原油や一次産品価格の急激な上昇」ととらえている。

しかし、金価格も上昇しているので、金を価値の基準と考えれば、今生じているのは、「ドルの急激な減価」ということになる。こうなるのは、アメリカの経常収支赤字の持続可能性とドル価値の維持について疑問が生じたからだ。

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