金融混乱の原因は証券化商品ではない

6月末に公表されたBIS(国際決済銀行)の年次報告は、昨年夏以来の国際的な金融市場の混乱について、サブプライムローン関連証券化商品の破綻は問題のきっかけ(trigger)ではあるが、原因(cause)ではないとしている。つまり、問題は証券化商品そのものではなく、それに対する投機を引起こしたマクロ経済の構造にあるというのだ。私は、この見方に賛成である。

BISの報告は、まず過去20年間にわたって、世界経済が安定的な経済成長による未曾有の繁栄を享受したことを指摘する(ただし、日本とドイツは例外)。インフレ率は低く抑えられ、金融市場は安定し、景気の下振れはきわめて浅くなった。ところが、それが2007年夏に急激に変調した。

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インフレへの対処は問題の正確な分析から

原油・食料価格の上昇には、長期的・構造的な需要増加と、短期的な投機要因のいずれもが影響している。基本的には、中国・インドなどの新興国の所得上昇に伴う需要増加だが、この変化は緩慢なものだ。価格がこの1年程度のあいだに急激な上昇を示した事実は、投機的要因を抜きにしては説明できない。

価格上昇に対処するには、まず問題の性質を明らかにすることがなによりも必要である。とりわけ、実需要因と投機的要因のウエイトを明らかにする必要がある。このいずれが主要な要因かによって、政策対応は大きく異なるものとなるからだ。投機なら短期的対症療法が中心であってもよいが、実需要因が大きいなら構造的な対応が必要だ。

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アイルランドの国民投票から日本が学ぶべきもの

欧州統合の基本文書であるリスボン条約の受け入れが、アイルランドの国民投票で否決された。これに対して日本の新聞は、総じてネガティブな評価を下している。この根底にあるのは、「欧州統合は正しい」という認識だ。「そして、それが国民の理解を得ていない」という理解である。

この問題を考えるため、ある国の世界に対する態度として、次の3つを区別しよう。

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高齢者医療の本質は被用者保険との関係

後期高齢者医療制度が、政治的に大きな問題となっている。この問題を考えるには、保険のイロハに戻って原理原則を明らかにする必要がある。私がこう考えるのは、今議論されていることの多くが、当面の批判を抑え、制度の根本問題を糊塗するためのものでしかないからだ。政府・与党は低所得者の負担軽減などを示しているが、これで問題が解決するわけではない。後期高齢者医療の問題は、今後ますます深刻化する構造的大問題である。したがって、制度の基本にさかのぼっての議論が必要だ。

医療保険制度は、「たまたま病気になって医療費が発生した人の負担を、病気にならず医療費負担が発生していない人が負担する」という仕組みである。もちろん、病気になる確率は人によって差がある。それへの対処は、確率が高い人の保険料を高くすることだ(これは、自動車保険で取られている仕組みだ)。健康保険の場合、事故率を決める最大の要因は年齢だから、この原則に従えば、高齢者ほど高い保険料を負担することになる。

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