まるきり見当違いな「貯蓄から投資へ」

資産運用に関する政府の基本メッセージは、「貯蓄から投資へ」だそうである。簡単に言えば、「銀行預金はやめにして、株式や投資信託を買いなさい」ということだ。

これを聞くと、私は40年ほど前に流行した「銀行よ、さようなら。証券よ、こんにちは」を思い出してしまう。これは政府が言ったことではなく証券会社のコマーシャルだが、言っていることは同じだ。

このときの結末がどうなったか。あらためて説明するまでもないが、念のために述べておこう。

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何が成長に必要なイノベーションか

安倍晋三内閣は、イノベーションによって経済成長を促進するという目標を掲げている。これに関連して、次の4点を指摘したい。

第一に、政府の関与について。基礎科学は別として、生産性に直結する応用技術について言えば、技術開発に政府が関与して望ましい結果が得られる場合は少ない(応用技術であっても、原子力や宇宙開発では、国が関与すべき余地が大きい。しかし、こうした重厚長大的技術の重要性は低下したと考えるべきだろう)。

政府が「イノベーション」を看板に掲げたとき何が起こるかは、容易に想像できる。まず、委員会をつくり、将来の経済発展に寄与する重点分野を選ぶ。そして、重点プロジェクトを選び、それを補助することが行なわれる。その結果、研究助成金の獲得合戦と補助金のばらまきが行なわれるだろう。

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法人税の軽減で経済は活性化しない

法人税の負担を軽減して日本経済の活性化を図ろうとする議論が有力になっている。しかし、この議論に対しては、強い違和感を覚えざるをえない。

まず第一に、「日本において法人税の負担が重い」という事実認識は、肯定しがたい。

最高の所得区分における法人税の表面税率を見ると、日本は30%でイギリスと同じであり、アメリカの35%よりは低くなっている。

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イギリスはなぜ復活したのか

2004年におけるイギリスの1人あたり国内総生産は、日本を上回る値となった。イギリスはついに日本より豊かな国となった。「イギリスの1人あたり国内総生産が日本を超えるのは時間の問題だ」と、この連載(06年3月4日号)で書いたが、それがついに現実になったわけだ。

現在、ヨーロッパの多くの国の1人あたり国内総生産が日本を上回っているが、これらの国々は人口規模の面では小国である。「ルクセンブルクの1人あたり国内総生産が日本の2倍近い」と言っても、「ルクセンブルクは日本のような大国とは異質だから、豊かさで日本を抜いても驚くことはない」という意見はありうるだろう。

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