住宅が支えた景気はすでに終わりつつある

不動産市場は活況を続けている。東京都や愛知県などで、住宅地と商業地の地価が5年ぶりに上昇に転じた。さらに、オリンピックで建設ブームが到来すると期待する向きもある。では、地価上昇の時代が再び日本に来るのだろうか?

まず最初に企業の業績を見ると、ここ数年、全般的には停滞が続く中で、不動産業の好調が続いてきた。

法人企業統計によると、全産業(除く金融保険業:全規模)の売上高は、この数年間、減少を続けている。2010年4~6月期に357.9兆円だったものが、13年4~6月期には311.7兆円と、13.0%減少した。13年4~6月期の対前年同期比は、0.5%の減少だった。製造業では、同期間に104.2兆円から92.2兆円へと、11.5%減少した。13年4~6月期の対前年同期比は、3.9%の減少だ。

ところが、不動産業は同期間に売上高が4%減にとどまったのである。13年4~6月期の売上高は、対前年同期比で製造業が3.9%減だったのに対し、不動産業は13.6%も増加した。

アベノミクスの効果で日本経済が活況を呈していると考えている人が多い。しかし、その印象は、円安によって輸出産業の利益が増大していることに幻惑されたものだ。売上高をマクロ的に見ると、停滞ないし減少が続いているのだ。しかし、その中で、不動産業の業績は順調に伸びている。現在、景気が回復しつつあると感じられる大きな原因は、不動産業の景気がよいことなのだ。

このことは、日銀短観(全国企業短期経済観測調査)でも確認できる。13年9月調査では、業況判断(実績)は、全産業の全規模合計で見ると、6月調査のマイナス2からプラス2に改善した。

しかし、製造業では、マイナス2である。つまり、「景気が悪い」と考えている企業のほうが多い。製造業の中小企業では、マイナス9である。

ところが、不動産業は、これと対照的で、12年6月からプラスが続いている。13年9月は12だ。大企業は実に24という極めて高い値である。

設備投資や貸し出しの増は住宅ブームのため

設備投資や金融機関貸し出しについて見ると、不動産業のウエイトの大きさは特に顕著だ。

13年4~6月期の法人企業統計で、全産業(除く金融保険業)の設備投資(含むソフトウエア投資)は、対前年同期比13.7億円(率では0.16%)増と、わずかではあるが増加した。12年10~12月期以降減少が続いてきたのが増加に転じたため、これは話題を呼んだ。そして、このことから、「金融緩和の効果が表れて、設備投資が増え始めた」と言われることがある。しかし、実態はまったく違う。

設備投資が増えたのは、不動産業の投資が対前年同期比686.5億円(20.1%)と大きく増加したことが原因だ。製造業はマイナス2868.6億円(マイナス9.1%)と大きく減少している(ただし、輸送用機械は15.2%の増)。

設備投資額における不動産業のウエイトは、それほど大きくはない。13年4~6月期に4099億円で、全産業8兆3102億円の4.9%にすぎない。それにもかかわらず、対前年増加額では、圧倒的なウエイトとなったのだ。

不動産業は、銀行貸し出しでのウエイトも高まっている。日本銀行の資金循環統計によって国内銀行の銀行勘定の貸出残高を見ると、不動産業に対する貸付残高は、11年7~9月期ごろから増加している。対前年増加額は、12年1~3月期から増加に転じている。しかも、13年1~3月期までは、増加幅が拡大してきた。

個人に対する貸し付け(この大部分は住宅ローン)も、増加が顕著だ。この残高も、09年7~9月期ごろから回復した。そして、13年4~6月期まで、増加幅が拡大してきた。

貸出増加額に占める比率を13年4~6月期で見ると、対個人貸し出しの比率は、総貸し出しで36.7%、設備資金で58.8%だ。そして、不動産業が、総貸し出しで9.0%、設備資金で14.5%のウエイトだ。個人と不動産業を合計すると、総貸し出しで45.7%、設備資金で73.3%のウエイトを占める。つまり、貸し出し増加の大部分が住宅関係なのである。

このように、貸し出しは、金融緩和の結果として全産業に対して増加したのではなく、住宅関連を中心として増えたのである(詳細は、『ダイヤモンド・オンライン』の連載「日銀が引き金を引く日本崩壊」を参照)。

投資はすでにピークアウトブームは去りつつある

住宅関係の貸し出しが増えたのは、住宅建設が増えたからである。GDP統計で民間住宅(実質季節調整系列の前期比)の推移を見ると、12年4~6月期から継続してプラスの増加率だ。特に12年10~12月期は、3.6%増と、かなり高い伸び率を示した。また、住宅着工統計で見ると、着工新設住宅戸数は、12年からほぼ継続的な増加を示し、夏以降はかなりの高水準になった。

住宅需要が増えた原因としては、消費税増税前の駆け込み需要が大きい。また、長期金利が歴史的低水準になったために住宅ローン金利水準が低下し、先行き上昇が予測されたことも影響している。

住宅建設の増加は、アベノミクスの効果だと言われることがある。しかし、右に見たように、12年初め(貸し出しは11年)からの現象だ。安倍内閣成立のずっと前からの現象であることに注意が必要だ。

住宅建設が増加したために地価が上昇したのだ。国土交通省が発表した13年の基準地価(都道府県地価調査)によると、住宅地地価は、全国的には依然として下落傾向が続いているが、下落幅は縮小し、三大都市圏は上昇となった。東京都は0.5%の上昇だ。商業地でも、三大都市圏を中心に地価上昇となった都府県が見られた。束京都は、0.7%の上昇だ。

ただし、さまざまなデータは、住宅投資がすでにピークを過ぎたことを示唆している。不動産業に対する貸し出しは、13年4~6月期には前期から減少している。不動産業の設備投資も4~6月期には前期より減少した。例年4~6月期には落ち込む傾向があるので、それを貴慮する必要がある。しかし、季節調整後のGDP統計でも、住宅投資は13年4~6月期は前期から減少している。また、新築住宅着工戸数の季節調整値も減っている。日銀短観でも、不動産業の予測は5で、実績値より低い。そして、消費税増税による反動減は確実に来る。

以上を考えると、地価がファンダメンタルズから離れたバブルを起こすとは考えにくい。企業が投資名義の低金利で資金を調達し、これを不動産投資に回していると言われることがある。また、海外の投機マネーが不動産市場に流入するとの見方もある。こうした動きはあるのかもしれないが、全体から見れば、一部のことだろう。地価は住宅ブームの遅行指標になっている可能性が高い。

今後の日本経済を支える主役は、公共事業増加を背景として、建設業にバトンタッチされるだろう。ただし、財源の制約があるから継続性はない。また、オリンピックの需要は期待できない。

1960年代のオリンピック時とも、80年代後半の地価バブル時とも、経済条件はまったく異なることに注意しなければならない。

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