公共事業依存の日本経済 その構造は継続できない

ここ数年の実質GDPの伸びを支えているのは、民間最終消費支出である。実質季節調整系列の年率寄与度で見ると、2013年4~6月期で1.9%だ(1次推計。なお、2次速報値がすでに公表されているが、これについては、次回に述べる)。なお、実質消費の増加は、安倍晋三内閣の経済政策でもたらされたものではなく、東日本大震災による一時的な落ち込みを除いて、リーマンショック後、継続している現象である。

ただし、4~6月期においては、伸び率が1~3月期よりは若干低下した。これは、円安に伴う消費者物価指数の上昇によって、実質額が削減された結果である可能性が高い(以上に関しては、『ダイヤモンド・オンライン』の連載を参照)。

GDP成長を支えている民間最終消費支出以外の要因には、若干の変化が見られる。年率寄与度を見ると、1~3月期は、民間住宅と公的固定資本形成が共に0.2%であったのに対し、4~6月期には、民間住宅が0%、公的固定資本形成が0.4%になった。このように、民間住宅の成長寄与度が落ち、政府固定資本形成のそれが上昇した。

実質民間住宅の対前期比(季節調整値、年率)は、12年10~12月期の15.1%、1~3月期の7.7%から、4~6月期には▲1%に低下した。消費税増税前の駆け込み需要が頭打ちになったのかもしれない。もっとも、対前年同期比はプラスを続けている(4~6月期で7.1%増)。また、住宅着工統計における新築住宅着工戸数は、13年の1~4月は伸び率が低下したが、5~7月は10%台という非常に高い伸び率だ。

GDP統計に戻れば、4~6月期の特徴は、政府固定資本形成が、実質GDP押し上げに大きな役割を果た七たことだ。これは、1月15日に決定された12年度補正予算の効果だ。その内容は、国の財政支出が10.3兆円、地方自治体や民間負担分を合わせた事業費で20.2兆円。国の財政支出中、公共事業費が3.8兆円。地方公共団体の分まで含めると5.5兆円というものだ。

これによる経済効果として、内閣府は、13年度の実質GDPを2%押し上げ、60万人程度の雇用を生み出すと試算した。この計算は、一定の乗数効果を織り込んだものと考えられる。しかし、仮に乗数効果がないとしても、支出の直接効果だけでGDPの1%を超える需要増加をもたらすはずである。

一方、名目原系列で見て、13年4~6月期における政府固定資本形成は、前年同期から5331億円ほど増えているにすぎない。したがって、補正予算の効果は今後も続くと考えられる。

なお、法人企業統計における4~6月期の設備投資額は、前年同期よりプラスの伸びとなった。この主たる要因は、公共事業の増加によって、建設業の設備投資が26%増加したことだ。

公共事業費が急増土建国家の復活?

右に見た補正予算における公共事業費5.5兆円は、12年度当初予算の公共事業費4.6兆円を上回る。そして、13年度の当初予算で、5.3兆円の公共事業費が計上されている。これらを合わせると、公共事業費は、10兆円を超える。

1990年代後半には公共事業費が拡大されたが、無駄な施設などの建設が増加したとして批判され、それ以来、削減され続けてきた。この結果、98年度に14.9兆円だった国の一般会計の公共事業関係費は、11年度には6.2兆円と、半分以下にまで減少した。

GDP統計の実質公的固定資本形成で見ると、96年には42.0兆円だったが、03年以降20兆円台になり、い11年には20.0兆円、12年には22.5兆円となった。

それが急増に変わったのである。建設工事受注動態統計調査報告によると、公共機関からの受注工事額の前年同月比は、4月が51.9%、5月が49.3%という、異常なほどの値だ。建設業者はバブルに沸いていると報道されている。

しかも、これは、今回限りで終わらない可能性もある。東日本大震災の復興事業のほか、民主党下で凍結されていた事業の再開もある。老朽化したインフラへの対策もあるし、巨大地震への対策もある。このように、公共事業を拡大する名目には事欠かない。自民党は「10年で200兆円規模の公共事業」と訴えていた。

これからの成長をどう実現するか

一般には、アベノミクスの第1の矢とされた金融緩和政策が、経済を拡大していると考えられている。しかし、実際には金融緩和政策は空回りしている。貸し出しが増えないからだ。実際の経済に影響を与えているのは、第2の矢とされた財政拡大政策である。

金融政策と財政政策では、政策手段と実体経済との関係が違う。金融政策の場合には、実体経済に影響を与えるルートは間接的だ。政策当局(日本銀行)が直接に操作できるのはマネタリーベースだが、それがマネーストックにいかなる影響を与えるかには、不確実性がある。仮にマネーストックが期待通りに動いたとしても、それが金利や物価などにいかなる影響を与えるかは、さらに不確実だ。

それに対して財政政策の場合には、財政支出が拡大すれば、それがただちに最終需要になる。乗数効果がなくとも、経済に対して確実に影響を与える。「経済が停滞している場合に、金融政策では対処できず、政府支出増という手段に頼る必要がある」というケインジアンの主張の根拠には、このような事情がある。

現在の日本では、まさにこの違いが問題となっている。安倍内閣の経済政策の3本の矢のうち、金融政策と成長戦略は、実体経済に影響を与えていない。むしろ、金利の上昇という、政策当局の意図とは逆の結果を生んでいる。

意図通りなのは公共事業の増加のみだ。アベノミクスというと、人々は、金融緩和政策をイメージする。しかし、その実態は、旧来型の公共事業バラマキ政策なのである。

これまで経済を支えてきた住宅建設は、駆け込み需要がなくなれば減少する。また、物価が上昇すると、実質消費の伸びも鈍化する可能性がある。したがって、今後、公共事業への依存が強まるだろう。しかし、この方向づけには問題がある。

第1の問題は、継続性だ。財源面の制約から、財政拡大を継続することはできない。第2は、事業の円滑な施行に不確実性があることだ。特に、技術者などの人手が足りない。公共事業が継続的に高い水準を維持する保証はないので、供給側としても、腰の引けた対応になる可能性もある。

以上を考えると、公共事業が、90年代後半のような水準に復帰することはないと考えられる。

では、今後の長期的な経済成長をどのように実現すればよいのか? 最も確実なのは、リーマンショック後の経済成長がそうであったように、家計消費に牽引役を期待することだ。

消費税率の引き上げが消費を減らすことは間違いない。しかし、財政の信頼を維持するために、引き上げは必要だ。引き上げを見送れば、財政に対する信頼が失われて、金利が高騰するだろう。

他方で、物価が下落すれば、これまでそうであったように、実質消費が増え続ける。この路線を追求すべきだ。ところが、7月の消費者物価の対前年同月比は、0.7%にまで高まった。円安によるコストアップに対応すべき必要性は、緊急のものになった。

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