長期的GDP成長の核は消費支出の順調な増加

内閣府が発表した4~6月期のGDP速報によると、同期の実質GDP(季節調整済み)の対前期比は、0.6%(年率換算2.6%)となった。この値は、1~3月期の0.9%(年率3.8%)より低い。

4月に日本銀行が異次元金融緩和措置を導入し、これによって経済が好転しつつあるとの見方が多かった。しかし、実際にはそうなっていない。民間調査機関による事前の予測では、年率3%台後半が多かったが、それは裏切られた。

スイスにいるアメリカ人の友人は、現地新聞の報道をメールで教えてくれた。地元新聞は、“Japan isheading right backwhere it was.”(日本は、まさに、いままでの状態に戻ろうとしている)。ドイツのDie Welt紙の見出しは、Schwache Zahlen.Japans Boom schwaechtsich schon wieder ab(弱い数字。日本のブームはすでに弱まる)。

注目されるのは、公的固定資本形成が1.8%(年率7.3%)という高い伸びを示したことだ。実質原系列の前年比は、実に10.7%増であり、他を圧している。

これは、1月に編成された大型補正予算の結果である。全体の成長率に対する寄与率は、0.1%だ。つまり、これがなければ、実質GDPの伸び率は0.5%になっていたはずなのだ。

アベノミクスの「3本の矢」のうち、第1の金融緩和政策は空回りしており、経済活動に影響を与えていない。第3の成長戦略は6月に閣議決定されたが、実質的な内容がほとんどなかった。したがって、実際に機能しているのは、第2の財政支出増だけ、ということになる。

補正予算による財政支出は、ばらまき型公共事業である。それは、資材購入や雇用を一時的には増加させるが、経済構造を変えることはない。そして、支出が終われば、拡大効果も終わってしまう。財政支出拡大には厳しい財源制約があるから、いつまでもこうした政策に頼ることはできない。

公共投資は増えるが設備投資は増えない

公的固定資本形成が著しい伸びを示す半面で、民間企業設備投資は減少を続けている。4~6月期の対前期増加率はマイナス0.1%だ。

「アベノミクスの影響で企業家心理が好転し、設備投資に動意が見られる」との見方があった。しかし、実際には、そうしたことは起こっていない。対前期比のマイナス幅は縮小しているが、マイナスが続いていることは、厳然たる事実だ。実質原系列の前年比は、マイナス4.7%である。

金融緩和政策の本来の目的は、実質金利を引き下げて設備投資を増やすことだ。しかし、そうした効果はまったく生じていない。安倍内閣は、成長戦略において、設備投資を年間70兆円台にまで増やすと明言した。486月期の名目民間企業設備投資(季節調整系列年率)は、61.9兆円だ。これが70兆円に増加する可能性は、ほとんどない。

やや意外なのは、民間住宅投資の対前期増加率が、マイナスになったことだ。消費税増税前の駆け込み需要によって民間住宅投資が増加していたのだが、この段階はもう終わったようだ。ただし、実質原系列の前年比は、7.1%という極めて高い伸びだ。つまり、1年前と比べると、公共事業と住宅投資が回復をリードしてきたわけだ。

実質輸出は、対前期比3%の増加となった。ただし、輸出が順調に増加しているわけではない。事実、実質原系列の前年比は、マイナス0.3%だ。1~3月期のマイナス3.3%に比べてマイナス幅は縮小したが、依然としてマイナスだ。

実質輸出は、2011年7~9月以降減少していたが、12年10~12月ごろをボトムとして回復している。4~6月の対前期比がプラスになったのは、この影響にすぎない。13年4~6月期の実質純輸出額は10兆円であるが、これは、中期的にはかなり少ない。リーマンショック後のピークであった10年7~9月の18兆円に比べると、6割弱でしかない。リーマンショック前のピークである08年4~6月、7~9月の21.3兆円に比べると、半分未満だ。

実質輸出が中期的に減少しているため、下請けである中小企業の生産は増えない。「景気が好転している」と言われるのは、円安によって輸出産業の利益が増大しているからだ。輸出に関わるのは大企業が多いため、利益増もほぼ大企業に限定されており、中小企業には及んでいない。

長期的な需要の伸びは年率1.3%程度

実質民間最終消費支出の対前期比は、0.8%増であり、実質GDPより高い伸びを示している。対前年増加率は1.8%だ(家計最終消費支出も、ほぼ同じ傾向)。額が大きいので、成長寄与度は大きい。4~6月期の寄与度は、0.5%だ。つまり、4~6月期のGDP増加は、ほぼ消費増による。

消費が増加する原因は、アベノミクスによる株高で利益を得た人々の消費増であり、百貨店での高額商品の売り上げが増えていると報道されている。しかし、商業動態統計調査における百貨店販売額は、6月を別とすれば、今年初めから傾向的に減少している。家計調査を見ても、13年4~6月期で、総世帯の1世帯当たりの消費支出名目値は、対前期比でも対前年同期比でもマイナスだ。

ただし、中長期的に見て、実質消費支出の伸び率が実質GDPの伸び率より高いのは事実だ。実質民間最終消費支出は、08年4~6月期の294兆円から13年4~6月期の315兆円まで、5年間で6.9%増加した。これは、年増加率で1.3%である。他方、GDPは、08年4~6月期の523兆円から13年4~6月期の526兆円まで、5年間で0.5%増加したにすぎない。年率では、0.1%だ。

前述を考え合わせれば、商業動態統計や家計調査には表れない形での実質消費増が生じていることになる。その詳細は、「ダイヤモンドーオンライン」の連載で分析した。結論だけを言えば、家計消費の中の「娯楽・レジャー・文化」に関する物価下落率が高いため、この項目の実質伸び率が高くなるということだ。

重要なのは、高い実質消費増加率は、アベノミクスの効果として生じたのではなく、より長期的・構造的な現象だということである。

実質民間最終消費支出は、リーマンショックや東日本大震災からの回復過程で、高い伸びを示した。13年4~6月期の伸び率が高い一つの原因も、12年7~9月期に伸びが停滞したことからの回復だ。ただし、回復はいずれフェイドアウトするので、伸び率は低下する。消費税の増税が行われれば、その傾向が強まる。そして、中期的に見れば、右で見たように年率1.3%程度になるだろう。GDPの長期的な成長率もこの程度になるだろう。

伝統的な考えでは、設備投資や輸出などの自律的需要項目で経済成長率が決まり、消費支出はGDP成長率によって受動的に動くとされてきた。

しかし、すでに見たように、設備投資や輸出を中心にした経済成長は期待できない。消費という内需の着実な増加を核とするタイプの経済成長を目指すべきだ。

今回のGDP統計は、秋に予定されている消費税増税の最終決定に関して判断材料になることから注目された。しかし、それより重要なのは、この数字が経済政策の抜本的見直しの必要性を示していることである。

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