円安下で深刻さを増す自動車産業の環境

円安が追い風となって、自動車関連企業の採算が好転していると伝えられる。2013年3月期の決算が増益となることを背景として、春闘のボーナスも満額回答となった。これで日本経済が所得面から押し上げられることになると、報道されている。

しかし、そうした傾向は、統計には表れていない。統計から見られるのは、まったく逆に、日本の自動車産業を取り巻く環境が深刻さを増していることだ。円安にもかかわらず輸出が減少し、他方、国内ではエコカー補助金の終了で販売台数が激減しているからだ。

まず最初に、乗用車の輸出動向を見よう。アメリカに対する乗用車の輸出は、東日本大震災の直後に大幅に落ち込み、その後回復した。このため、12年5月には、台数で対前年比134%増、金額で135%増という目覚ましい伸びを実現した。しかし、それは、11年における落ち込みがあまりに大きかったことの反動にすぎない。

実際、12年8月からは、輸出台数では、対前年比がマイナスに転じた。12年11月から円安が進展したにもかかわらず、この傾向は続いている。1月は対前年比マイナス7.1%、2月はマイナス18.2%だ。

つまり、円安になったにもかかわらず、対米乗用車輸出台数は増えていないのである。これは、一般の印象とはかなり異なるものだ(円安になったため、輸出価額は1月には前年比10%増となった。しかし、2月には3.8%減だ)。

長期的に見るとどうか。06年3月から08年3月まで日本のアメリカ向け乗用車輸出は、月額4000億円を超えていた。5000億円近くに達した月もある。しかし、08年11月以降は、2000億円台にとどまっている。13年2月では2715億円だ。このように、長期的に見て、日本の対米乗用車輸出は、06~08年ごろに比べると半分程度、リーマンショック直前に比べても、3分の2程度に減少しているのである。

全世界に対する乗用車輸出も、同様の傾向だ。06年2月からは毎月8500億円を超えていた。06年9月から08年9月までは1兆円を超えていた。しかし、経済危機によって大きく落ち込んだ。

その後回復したが、東日本大震災の直後に再び大幅に落ち込んだ。それから回復したものの、12年8月からは、輸出台数では、対前年比マイナスに転じた。12年2月をピークとして、金額でも台数でもほぼ継続的に減少を続けている。対前年同月比で見ると、12年8月以降、輸出額でも台数でも、マイナスの伸び率が続いていた。13年2月の輸出価額は前年比5.2%の減、台数は前年比13.4%の減である。

エコカー補助金終了で激減した国内乗用車販売

国内の販売は、エコカー補助金によって大きく変動している。

この制度は、経済危機後の自動車輸出の激減に対処する手段として導入されたものだ。第1回は09年4月から10年3月までで、予算総額は3572億円。申請総数は274万台だった。延長され、10年9月までとなった。予算総額は2304億円。申請総数は177万台だった。いったん終了したが、12年4月から13年2月までの施策として復活した。予算額は3000億円。ただし、申請総額が予算額を超過したので、12年9月をもって受け付けを終了した。

国内販売台数(四輪)は、この政策によって大きな影響を受けている。経済危機後に落ち込み、09年4~6月期には100万台を割り込んだ。しかし、エコカー補助金によって増加し、09年7~9月期には120万台を超える水準になり、10年1~3月期には約150万台にまでなった。

しかし、エコカー補助金とは、需要の先食いにすぎない。制度が終了すれば販売台数が減ることは、予測されていた。実際、制度の終了で、10年10~12月期には、再び100万台を割り込み、大震災後の11年4~6月期には77万台にまで減少した。

12年には、エコカー補助金の復活で販売台数が増加し、1~3月期には169万台というピークを記録した。その後は、12年7~9月期133万台、12年10~12月期109万台となっている。つまり、補助金の終了で、激減したわけだ。ピークに比べれば64%の水準まで落ち込んだことになる。需要が先食いされたので、今後は容易に復活しないだろう。日本自動車工業会が1月に発表した予測では、13年の国内の新車販売台数は、12年の537万台に比べて11.7%減の474万台にとどまる。このような国内販売の減少を、円安で補うことは、不可能と考えられる。

以上のように、外需、内需共に落ち込んでいるので、国内の乗用車生産も落ち込んでいる。国内生産(四輪)は、12年1~3月期の277万台をピークに減少を続けている。12年10~12月期には226万台だ。

売上高利益率が低下中小企業はさらに厳しい

利益の動向はどうだろうか? 法人企業統計で百動車・同附属品製造業」(全規模)の営業利益を見ると、次の通りだ。

年間で見ると、11年にはマイナスだったが、12年にプラスに転じた。しかも、1.6兆円に達した。これは、08年、10年がほぽ1兆円だったのを上回る(ただし、07年の3.2兆円に比べると、半分だ)。四半期別で見ると、12年1~3月期から7~9月期までは、毎期4400億円を超える水準だった。しかし、10~12月期には2058億円と、半分以下に縮小してしまったのである。これは、明確に補助金終了の影響だ。

つまり、12年の利益が11年より増大したのは事実だが、それは、11年の落ち込みが激しかったことの反動と、エコカー補助金による。円安はこれとは無関係だ。

そして、すでに述べたように、円安であるにもかかわらず、輸出台数の尅剛年比はマイナスを続けている。そして、エコカー補助金の復活も考えられない。したがって、13年の営業利益は、12年より大幅に落ち込む可能性が強い。

一般に、「円安で自動車産業の業績が好転し、利益が増えた」と考えられている。しかし、実際には、まったぐ逆の現象が生じているのである。

さらに、次の2点に注意が必要である。

第1は、売上高営業利益率が低下していることだ。07年には4.5%だったが、12年は、補助金があったにもかかわらず、2.6%だ。

第2は、企業規模別の差異だ。以上で見たのは全規模だが、企業規模別では大きな差異が見られる。中小企業のレベルでは、売り上げが著しく減少している。

資本金1000万~2000万円の企業では、12年4~6月期から、売上高が前年の半分程度に激減している。このため、12年10~12月期の営業利益はマイナスになった。この期には、2000万~5000万円の企業も営業利益がマイナスだ。生産が増加しないため、中小企業の受注が増えていないのである。このように、中小企業にとっての厳しさは、増している。

もっとも、大企業も安泰ではない。これまで見たように、円安は販売台数を増していない。販売台数の増加のためには、補助金が不可欠だ。しかし、これまでの補助金の成果は、ボーナスという形で従業員に配ってしまった。そうした以上、再び補助を求めるわけにはいかないだろう。自動車産業は、自分で自分の首を絞めてしまったことになる。

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