実体経済は厳しいが株価だけが上昇する

2月上旬の輸出額は1兆6109億円で、昨年の1兆8626億円に比べて、実に13.5%の減となった。1月の輸出額は4兆7985億円で、対前年比6.4%増となったのだが、再び減少したわけだ。なお2月上中旬では3兆4270億円となっている。

円安が進んでいるため、輸出の価格指数は上昇している。円ドルレートは、2012年2月初めの1ドル77.65円から13年3月初めの93.28円になっているから、仮にドル建て価格が一定なら、価格指数は20%程度の上昇になっているはずだ。したがって、輸出額が13.5%も落ち込んだのは、数量指数が30%以上落ち込んだことを意味する。これは、極めて深刻な事態である(実際には、ドル建て価格も下落しているのかもしれない。それでも、深刻な事態であることに変わりはない)。

1月の貿易統計で数量の対前年比を品目別に見ると、自動車はマイナス6.6%だ。電機のうち

映像機器はマイナス40.9%と著しい減少だ。建設用・鉱山用機械は、輸出額でマイナス35.4%だから、数量ではそれを超える落ち込みになっているはずだ。こうした状況が、2月にも引き続いている可能性がある。

国内生産に影響するのは、輸出額の変化というよりは、輸出数量の変化だ。鉱工業生産指数は、13年1月には89.7となり、12年12月の88.8より上昇した。しかし、輸出数量が大きく落ち込んだので、2月に再び低下する可能性もある。1月の数字自体、さして目覚ましい回復ではない。12年秋以来大きく落ち込んできたのが、やっと下げ止まったという程度だ。12年1月の95.9に比べると、6%ほど低い。

生産指数を品目別に見ると、乗用車でも13年1月に96.3であり、12年1月の111.4に比べると13.6%ほど低い。一般機械工業は78.6であって、12月より落ち込んでいる。12年1月の93.9に比べると、16.3%落ち込んでいる。

ジェトロ(日本貿易振興機構)が計算する「ドル建て貿易概況」を見ても、以上と同様の傾向が見られる。13年1月のドル建て輸出額の前年同月比を見ると、中国がマイナス9.2%、アメリカがマイナス2.2%、カナダがマイナス11.5%、欧州がマイナス15.8%などとなっている。商品別に見ると、鉄鋼がマイナス9.0%、一般機械がマイナス14.1%、電気機器がマイナス9.6%、自動車がマイナス9.9%などだ。

円安は利益増に貢献していない

3月1日に法人企業統計の12年10~12月分か公表された。それによると、全産業の経常利益は、対前年同期比7.9%の増となった。製造業では、21.4%増だ。7~9月期には、全産業で6.3%増、製造業は2.1%減だったので、かなり改善されたわけだ。この数字だけを見ると、「12年の秋以降進展した円安が、日本企業の利益を増大させている」と思いたくなる。しかし、そうではない。その理由は次の通りだ。

もし円安が利益増の原因なら、売り上げが増えているはずである。しかし、現実には売り上げは増えておらず、むしろ減っている。全産業で対前年同期比6.8%減、製造業では7%減だ。季節調整済み対前期比では、全産業、製造業共に2%減だ。つまり、前年に対してだけでなく、前期に対しても減り続けているのだ。円安の恩恵を最も受けそうな輸送用機械でさえ、そうである(対同年同期比16.7%減)。

売上数量が、仮に増えないにしても一定でさえあれば、円安によって売上額は増大するはずだ。現実に売上額が減っているのは、円安ではカバーできないほどの、大きな売上数量の減少が起きているからだ。その中で大きな比重を占めるのが、先に述べた輸出数量の減少だ。

実際、営業利益を見ると、減益になっている(全産業で対前年同期比5.5%減。製造業では0.9%減)。

営業利益とは本業から生じる利益であり、経常利益はこれに金融収支などの本業以外の損益(主として金融収支)を加えたものである。かつての日本では、借入金の利払いが利子収入を上回ったため、経常利益は営業利益を下回るのが常態だった。しかし、借入金が減少したため、05年以降、経常利益が営業利益を上回るようになっている。この傾向は、製造業において特に著しい。

12年10~12月期において、営業利益が減少したにもかかわらず経常利益が増加したのは、本業以外の活動で利益が増えたからである。株価高騰による保有株式の評価増が、その原因である可能性が高い。本業の業績が芳しくないのに、こうした原因で利益が増えるのは、健全な現象とは考えられない。また、株価高騰が経常利益を増やし、それが株価をさらに上げるとすれば、実体には関わりのない原因で株価が自己増殖的に上昇していることになる。これは、バブルのメカニズムに他ならない。

なお、12年10~12月期の経常利益の対前年伸び率が高くなっているのは、形式的に見れば、11年10~12月期の水準が低過ぎたからだ。企業の経常利益は、11年の東日本大震災で急減し、11年7~9月期まで減少を続けた。その後回復したが。11年10~12月期には、まだかなり低い水準にあった。だから、12年の10~12月期の利益は、10年の10~12月期と比べると、全産業では3.2%ほど、製造業では4.6%ほど低い水準だ。このような傾向も、株価の変動で説明できる側面が大きいと考えられる。

株価高騰は、中小企業には利益を与えていない

さらに重要な点は、売り上げでは規模別にさはどの違いがないにもかかわらず経常利益では大きな違いがあることだ。

まず、12年10~12月期の売上高対前年増加率を資本金階層別に見ると、資本金10億円以上がマイナス6.7%、1億円以上10億円未満がマイナス3.6%、1000万円以上1億円未満がマイナス8.4%である。このように、中小企業の減少率が大きくなっているものの、大企業でもそれとあまり変わらぬ減少率だ。

ところが、経常利益の増加率は、資本金10億円以上が19.6%、1億円以上10億円未満が2.0%、1000万円以上1億円未満がマイナス5.4%と、著しい差が見られるのである。経常利益の増加が株高によるものだと考えると、このことの説明がつく。すなわち、大企業は大量の株式を保有しているために株高の利益を受けることができるが、中小企業ではそうした利益は生じないのだ。そして、受注減や原材料価格の上昇に苦しむことになる。

また、経常利益の伸び率は、業種別に見ても大きな違いがある。すなわち、石油・石炭(対前年比108.5%)、輸送用機械(37.3%)などが大幅な増益になっている半面で、鉄鋼(マイナス81.5%)、生産用機械(マイナス24.7%)などは大幅な減益になっている。非製造業では、サービス業、卸売業、小売業、運輸業、郵便業などが減益だ。

以上のような差異があるにもかかわらず、どの業種の企業の株価も、ほぼ一様に上昇しているのである。

つまり、株価は企業の業績とは関わりなく上昇しているのだ。大幅な減益になっている鉄鋼産業でも、株価は昨年秋から5割近い上昇を示している。

以上で見たことは、将来に対する漠然とした期待が株価上昇を支えていることを示すものである。

Comments

comments

Powered by Facebook Comments