日銀頼みの国債消化が行き詰まるとどうなる?

緊急経済対策で大型補正予算が組まれ、また2013年度予算の政府案が閣議決定された。公共事業は、補正予算から引き続いて増加している。民主党時代の「公共事業は全部駄目」という硬直的な政策からの転換は評価したい。

ただし、需要追加が目的であれば、一回限りの政策では不十分だ。支出が終われば、需要拡大効果も終わりになるからだ。外需の縮小は構造的だから、「供給能力を所与として需要を追加」という考えを取る限り、今回程度の需要追加を今後も続ける必要がある。

したがって、長期的な影響を重視する必要がある。問題は、こうした支出増によって、金利が上昇する恐れがあることだ。自民党が言うように10年間で200兆円の支出を行い、そのすべてを国債で賄うこととすれば、国債残高はかなり増加し、政府の利払い償還能力に対する信頼が崩壊する危険がある。

いまのところ、表面的には金利は上がっていない。しかし、それは、国債消化をめぐる特殊な条件があるからだ。それについて、以下に述べよう。

これまで日本の国債は、主として金融機関が購入してきた。それが最近大きく変質している。変化は二つある。第1は、日本銀行が10年10月に包括的金融政策を採用し、資産購入のための基金を創設して、国債の購入に乗り出したことだ。これが行われたのは、09年度から国債発行額が急増し、金利上昇が懸念されたためだ。いま一つの変化は、海外からの国債購入が増加したことである。これは、ユーロ危機の影響で、南欧国債から流出した資金が日本に流入しているためだ。

日銀の資金循環統計によって、11年7~9月期と12年7~9月期を比べると、次の通りだ。

まず、国債・財投債の残高は、750兆円から780兆円へと30兆円増加した。機関ごとに見ると、日銀が64兆円から84兆円に20兆円増。保険・年金基金は、195兆円から209兆円へと14兆円増。海外が49兆円から56兆円に7兆円増。その他金融仲介機関が4.6兆円増だ。以上の合計で約46兆円になる。

他方で、預金取扱機関(銀行やゆうちよ銀行がここに含まれる)は、279兆円から271兆円へと8兆円減少した。つまり、最近の国債消化は、国内金融機関の国債残高を減らす形で行われている。日銀と海外の購入があったので、国債市場が供給過剰にならなかった。

海外保有が増え不安定化する国債保有構造

保険・年金基金の国債残高が増えているのは以前からの傾向で、これは将来も続くだろう。しかし、日銀や海外の残高増加は、ここ数年の傾向だ。12年9月末の国債残高に対する比率は、日銀が約一11%、海外が約7%になった。海外は、10年ごろと比べると、約25兆円も増加している。

日銀と海外の購入がなければ、金利はかなり上昇していたはずである。これらのうち海外からの投資は不安定なものであり、何かのトリガーで資金の流れが反転する可能性がある。しかも、そうした動きが生じると、コントロールできない。

メガバンクは、そうした事態に備えて、保有国債の期間を短期化している。短期化すれば、金利高騰による国債の価値低下を抑えられるからである。最近では、地方銀行も同様の措置を取りつつあると言われる。

金融資産のリスクを表す指標として、CDSのスプレッドがある。CDSとは、資産の価値が下落した場合にそれを保証するデリバティブだ。スプレッドは保証料のようなものである。これが400ベーシスポイントを超えると危険であり、200ベーシスポイントが要注意であると言われる(イタリア、スペインの5年債が200~300ベーシスポイント程度)。

日本国債(10年債)のCDSのスプレッドは、12年11月には100ベーシスポイントだったが、13年1月に急上昇し、約150ベーシスポイントになった。その後下がったものの、125ベーシスポイント程度であり、アメリカやドイツの国債が30~80ベーシスポイント程度であるのと、大きく異なる。

つまり、日本国債は、米独国債とはリスクが全く異なると見なされているのだ。そして、それには理由がある。国際比較で見て、日本の財政事情は非常に悪いからだ。特に、国債残高が大きい。12年末の一般政府総債務残高の対GDP比は、日本は234.5%で、イタリアの125.8%より遥かに深刻だ。

金利が上昇すると利払いが増える。このような国の国債が買われて金利が低下し、米独国債より低い利回りになっているのは、異常な状況だと考えざるを得ない。ユーロ危機の影響で資金が流入しているのは米独と同じだが、日本国債は一時的な退避先にすぎない。だから、条件が変化すれば一挙に流出してしまう。資金の運用先として日本国債を選ぶ必然性はなく、米独の国債を買えばよいからだ。

国債残高は、消費税を増税しても減ることはない。13年度の予算案は、表面上は歳出規模を抑え、また国債発行額が税収見込みを下回る形となっている。しかし、これはいくつかの粉飾によるものであり、財政赤字が実質的に減少することにはなっていない。実際、補正予算と合わせて見れば、歳出規模は過去最大になっており、歳出構造の見直しは進んでいない。とりわけ、社会保障の見直しは、政策アジェンダにも上かっていない。安倍政権の基本的なメッセージは、財政を今後も膨張させていくということだ。

国債購入が行き詰まれば日銀引き受けに

現在の低金利の状態は、日銀の購入が支えている人為的なものだ。日銀が金融緩和を続ける目的は消費者物価指数の上昇だとされているが、本当の目的は国債の購入である。そして、これを続けられるかどうかという問題が生じつつある。

日銀が購入限度額を引き上げれば、いくらでも国債を購入できるように思われる。しかし、実際は問題があるのだ。日銀の購入は行き詰まる可能性がある。その理由は次の通りだ。

これまでは、金利が低下してきた。だから、銀行は国債を売れば売却益を計上できた。しかし、金利高騰局面(国債価格下落局面)になると、事態が逆転する。利益を計上できないだけでなく、損失が現実化する場合もある。

日銀購入が行き詰まるもう一つの理由は、国債を売って日銀当座預金が増えれば、金融機関の資金運用収入が減ってしまうことだ。本来は、当座預金が増えれば貸し付けが増えるはずなのだが、資金需要がないため、そうならない。

実際のデータを見ると、次の通りだ。預金取扱機関の負債で、11年7~9月期から12年7~9月期の間に、預金現金は、1191兆円から1218兆円へと26.5兆円増加した。貸し付けは12.5兆円増加したが、預金増のほうが大きい。日銀当座は10兆円増加した。したがって、金利収支が悪化することになる。

こうしたことを背景として、札割れ(応札額が予足した入札額に達しないこと)の事態は頻発している。銀行は国債を売りたがらないのだ。「大幅な金融緩和を行う」とか「無制限の金融緩和」と言われるが、市中消化した国債を日銀が購入するという現在の方式を続ける限り、どこまでも金融緩和を行つことはできないのである。

このため、日銀引き受けに向かわざるを得ないことが懸念される。すると、前回論じたような日銀の独立性が重大な問題となる。

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