総選挙で社会保障の負担の全体像を示せ

今回の総選挙で、TPPや脱原発は重要な争点とされている。しかし、社会保障制度の改革は重要な争点とは見なされていない。

こうなるのは、いくつかの理由がある。第1は、緊急の問題ではないことだ。TPPのようにここ数力月の間に基本的な態度を決めなければならないような問題ではない。

第2は、社会保障制度の改革を真面目に考えれば負担増や給付削減を提案せざるを得ないが、それは確実に不人気な政策となるからだ。どの党も負担増には囗をつぐむ。昔からそうだったが、今の日本では特にそうだ。他党が囗をつぐんでいるなら、わざわざ言いだして批判されることはない。

第3の理由は、脱原発などに比べて、わかりにくい問題であることだ。脱原発の是非を判断するにはさまざまな情報が必要だが、論点自体は極めて明瞭だ。それに比べて社会保障の問題は、「どこに問題があり、なぜそれが問題か」が明確に理解されていないのである。

実際、2009年の総選挙の際には、「消えた年金」が重要な問題としてクローズアップされた。これが無視し得ぬ問題であることは言うまでもないが、事務的なミスの問題であり、年金財政の基本構造に関わる問題ではない。少なくとも、これが解決されたところで年金問題が解決されないことは明白だ。

この連載で指摘してきた550兆円の積み立て不足の問題は、まったく問題として意識されていない。政府は「問題でない」という(誤った)説明をしているので、これに積極的に手を付けることはないだろう。そうなると、負担は将来世代につけ回しにされることになる。

将来の負担軽減は最重要の成長戦略

年金制度が世代間移転をもたらすこと自体は、かなり広く認識されている。しかし、「なぜそれが問題か?」は十分理解されていない。

世代間移転とは、「ある世代が得をして、他の世代が損をする」という、世代間の損得問題だ。しかし、世代間移転は、年金制度を通じて起こるものだけでない。まず、遺産相続によって世代間移転が行われる。移転の範囲を広く取れば、扶養や教育を通じる世代間の移転もある。これらを合わせて考えれば、年金制度で将来世代が負担を負うとしても、ただちに問題だとは言えない。

しかし、世代間移転は、次の二つの問題をもたらす。それが問題なのである。

第1は、将来の経済パフォーマンスに悪影響を及ぼすことだ。なぜそうなるかを説明しよう。

年金の場合、前回述べたように、将来時点において生産年齢人口が重い負担を負うが、年金受給者が同じ社会に存在している。したがって、現時点から将来時点に負担が移転されるわけではない。問題は、将来時点において、若年者から高齢者への移転が起こるということなのである。

ただし、このことは、「だから問題がない」という意味ではない。生産年齢人口が負担を負えば、そうでなくとも高い日本の人件費は、さらに高くなる。現在すでに、社会保険料の負担は、企業が人を雇う際の最大の障害になっている。非正規労働者の増加は、社会保険料負担を免れようとする企業の行動によってもたらされた面も強い。

こうして、日本の国際競争力がそがれる。わかりやすく言えば、「若者がつらい思いをして働き、高齢者は若者から金をもらって温泉に行く。そのような経済では、生産性は低下する」ということだ。総選挙で社会保障の負担の全体像を示せ

今回の総選挙で、TPPや脱原発は重要な争点とされている。しかし、社会保障制度の改革は重要な争点とは見なされていない。

こうなるのは、いくつかの理由がある。第1は、緊急の問題ではないことだ。TPPのようにここ数力月の間に基本的な態度を決めなければならないような問題ではない。

第2は、社会保障制度の改革を真面目に考えれば負担増や給付削減を提案せざるを得ないが、それは確実に不人気な政策となるからだ。どの党も負担増には囗をつぐむ。昔からそうだったが、今の日本では特にそうだ。他党が囗をつぐんでいるなら、わざわざ言いだして批判されることはない。

第3の理由は、脱原発などに比べて、わかりにくい問題であることだ。脱原発の是非を判断するにはさまざまな情報が必要だが、論点自体は極めて明瞭だ。それに比べて社会保障の問題は、「どこに問題があり、なぜそれが問題か」が明確に理解されていないのである。

実際、2009年の総選挙の際には、「消えた年金」が重要な問題としてクローズアップされた。これが無視し得ぬ問題であることは言うまでもないが、事務的なミスの問題であり、年金財政の基本構造に関わる問題ではない。少なくとも、これが解決されたところで年金問題が解決されないことは明白だ。

この連載で指摘してきた550兆円の積み立て不足の問題は、まったく問題として意識されていない。政府は「問題でない」という(誤った)説明をしているので、これに積極的に手を付けることはないだろう。そうなると、負担は将来世代につけ回しにされることになる。

将来の負担軽減は最重要の成長戦略

年金制度が世代間移転をもたらすこと自体は、かなり広く認識されている。しかし、「なぜそれが問題か?」は十分理解されていない。

世代間移転とは、「ある世代が得をして、他の世代が損をする」という、世代間の損得問題だ。しかし、世代間移転は、年金制度を通じて起こるものだけでない。まず、遺産相続によって世代間移転が行われる。移転の範囲を広く取れば、扶養や教育を通じる世代間の移転もある。これらを合わせて考えれば、年金制度で将来世代が負担を負うとしても、ただちに問題だとは言えない。

しかし、世代間移転は、次の二つの問題をもたらす。それが問題なのである。

第1は、将来の経済パフォーマンスに悪影響を及ぼすことだ。なぜそうなるかを説明しよう。

年金の場合、前回述べたように、将来時点において生産年齢人口が重い負担を負うが、年金受給者が同じ社会に存在している。したがって、現時点から将来時点に負担が移転されるわけではない。問題は、将来時点において、若年者から高齢者への移転が起こるということなのである。

ただし、このことは、「だから問題がない」という意味ではない。生産年齢人口が負担を負えば、そうでなくとも高い日本の人件費は、さらに高くなる。現在すでに、社会保険料の負担は、企業が人を雇う際の最大の障害になっている。非正規労働者の増加は、社会保険料負担を免れようとする企業の行動によってもたらされた面も強い。

こうして、日本の国際競争力がそがれる。わかりやすく言えば、「若者がつらい思いをして働き、高齢者は若者から金をもらって温泉に行く。そのような経済では、生産性は低下する」ということだ。

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