人口減は問題でない人材鎖国こそ問題

今年3月末時点の日本の総人口が昨年に比べて約26万人減少したことが、住民基本台帳に基づく調査でわかった。

このニュースに対する多くの人の反応は、「これで日本経済の衰退化かさらに進む」というものだ。人口の減少が今後も続くことを憂慮し、少子化に歯止めをかけるべきだとの意見も多い。しかし、こうした認識は、誤っている。

なぜなら、総人口の減少は、経済的に見てあまり重要な問題とは言えないからである。

国立社会保障・人口問題研究所による将来人口推計(中位推計)によれば、2030年の総人口は、現在より約1000万人減少して約1億1700万人となり、50年には9700万人となる。しかし、50年までの年平均減少率は0.7%にすぎない。これは、通常の経済分析では無視し得る変化である。また、9700万人という人口規模は、日本が活気に溢れていた1960年代の人口と同じだ。決して「少な過ぎる」ものではない。

人口に直接に関係しているように考えられる経済活動として、住宅建設がある。実際、実質住宅投資額は、94年から10年までの間に、ほぼ半減している。したがって、これを人口減少と結び付けたくなる。しかし、総人口はこの間にわずかではあるが、増加しているのである。

重要なのは、総人口の減少でなく、年齢構成の変化なのである。これは、総人口の減少よりはるかに大きな影響を日本経済に与える。将来人口推計によると、労働年齢人口(15~64歳層)は一貫して減少を続ける半面で、高齢者人口(65歳以上層)は、40年までは増加を続ける。

その結果、10年には0.57であった「依存率」(15~64歳層に対する14歳以下層と65歳以上層の割合)は、30年に0.72、50年に0.94と悪化する。

これが引き起こす第1の問題は、社会保障制度の問題だ。給付を受けるのは主として高齢者であり、その負担が若年者にかかる、という問題である。だから、消費税増税より、社会保障制度、とりわけ年金制度の見直しのほうが重要なのだ。「一体改革」で本来必要だったのはそうしたことなのだが、結局何もなされなかった。

第2は、労働力の減少だ。総人口の減少は10年間で470万人弱でしかないが、労働年齢人口は780万人も減る。年齢構成の変化がいかに大きな影響を日本経済に与えるかがわかる。前回述べたように、日本再生戦略はこのことを十分考慮に入れているのかどうか、疑問である。

第3に、年齢構成の変化は、需要構造を変化させる。上で、住宅建設は総人口の推移と相関していないと述べた。しかし、15~64歳人口とは相関している(この年齢層の人口は、この間に約7%減少)。また、有料老人ホームという形での居住施設は、2000年にはわずか350しかなかったが、08年には3569と10倍以上になった。

住宅以外についても、需要が変化するので、産業構造が変わる。前回述べたように、製造業の就業者が減る半面で、医療・福祉分野の就業者が増加する。対外関係も大きく変わり、経常収支の黒字が縮小する(現在起きている貿易赤字拡大は発電の火力シフトによるが、それがなくとも、長期的にそうなる)。

人材の受け入れと進出で労働者の受け入れと移民を増やすことである。労働人口が減る場合に、若い労働力を海外から入れるというのは、ごく自然な方向だ。

移民によって国内の需要も増える。その顕著な例は、住宅需要の増加だ。これは、アメリカでは実際に起こったことである。移民などによって低所得者階層の住宅需要が増え、それが「サブプライムローン」という低所得者向けの新しい住宅口ーンを生んだ。行き過ぎて、住宅価格バブルを引き起こすまでになった。日本でも、移民が増えれば、住宅をはじめとして、さまざまな国内需要が増えることは間違いない。現在の日本で、外国人労働者の比率は、0.3%にすぎない。ヨーロッパでは5~10%程度が普通である。韓国では2.2%程度だ。また、人口1億人当たりの移民受け入れ数は、イギリスでは1120万人だが、日本は170万人でしかない。

労働力が減少してゆくにもかかわらず外国からの人口流入を拒否すれば、問題が深刻化するのは、当然のことだ。

もうひとつ必要なのは、日本人が海外に出て経済活動を行うことだ。やる気のある人が海外に出るのだ。これも、世界の常識である。人口1億人当たりの移民の出国数は、イギリスでは750万人、韓国では430万人だ。

しかし、日本では60万人でしかない。日本の若者の大部分は、活動の場を海外に求めることを最初から考えていないのである。

このように、日本は人の出入りにおいて鎖国状態である。人材のグローバリゼーションという点で、日本は世界の傾向からまったくはずれてしまっている。

出生率引き上げは解にならない

日本には、少子化対策の特命担当大臣がいる。このポストが設けられたのは、出生率引き上げが必要と考えられたからだろう。

このポストの設置後、出生率が上昇したことは事実である(合計特殊出生率は、05年に1.26と過去最低を記録した後、06年以降は上昇傾向に転じた。08年、09年は1.37と横ばいだったが、10年に1.39になった)。ただし、こうなったのは、少子化対策の成果ではなく、団塊ジュニアの駆け込み出産などがあったためだと言われている。したがって、これは一時的な上昇である可能性が高い。また、人口の維持には2.07の出生率が必要なので、現在の値が低過ぎることに変わりはない。

このことは、たぶん多くの人が認識しているだろう。一般に認識されていないのは、「仮に出生率を引き上げられたとしても、問題は解決せず、かえって悪化する」ということだ。

なぜかと言えば、人間が生まれてから生産活動に寄与できるようになるまでには20年を超す歳月が必要であり、それまでの期間は、依存人口が増えるからだ。

すでに述べたように、高齢者人口の増加は、いつまでも続く問題ではなく、40年ごろまでの問題なのだ。いま出生率を引き上げれば、問題が深刻であるまさにその期間において、問題をさらに深刻化させることになる。「出生率を引き上げよう」と考えられること自体が、問題の本質が正しく理解されていないことを暴露している。

誤解のないように付言すれば、私は「出生率を引き上げるべきでない」と言っているのではない。子どもがたくさんいる家庭や、安心して子育てができる社会は、望ましいものだ。私か言っているのは、「人口問題に対する経済的な解決策として出生率引き上げを考えるのは誤りだ」ということである。

人口構造の変化は、さまざまな問題を引き起こす。それらは経済構造の変化なのであるから、経済的手段で対応できることである。必要なのは、そうした対応を行っことだ。人口減少をいたずらに恐れたり、出生率を上昇させようと無益な努力をすることではない。

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