バブル崩壊による世界的株安が進行中

世界は、株安の激震に揺れている。生じていることの本質は、バブルの崩壊だ。

バブルは、国によって違うかたちを取っていたが、金融的に相互に連関している。株安が一国にとどまらず、世界各国で同時進行しているのはそのためだ。

アメリカのバブルは、「住宅価格の上昇、住宅ローン証券化商品(RMBS)やその再証券化商品(CDO)の増殖」というかたちで生じた。中国とインドでは株価が投機的に上昇した。日本におけるバブルは、わかりにくいかたちで生じた。それは、異常な円安である。

これらの現象が「バブル」であるのは、「投機が投機を正当化し、さらに投機を誘発する」という現象がいずれについても生じたからだ。このため、経済実態から乖離した価格上昇が自己増殖したのである。

株についてこの現象が起こりうることは、説明するまでもないだろう。アメリカの場合、住宅価格が上昇すると、所得に対して高すぎる住宅を買っても住宅の転売でローンが支払えるために、バブルが生じた。

円安バブルのメカニズムは、少しわかりにくい。最初は経済活動の停滞に対処するための金融緩和であった。日本の長期金利水準は、1997年から1%台に低下した。

外国との金利差が拡大すると、円を売って外貨で運用することが有利になる。このため、日本から海外への資金の流れが生じて、円安が発生する。ただし、金利差による利益は、本来は将来の為替レートが円高に動くことによって打ち消されるはずである。この関係を示す式を「金利平価式」というが、98~99年頃にはほぼこの式に従って円高が進行した。

ところが、円高は輸出関連企業の利益を圧迫する。そこで、政府による円売りドル買い介入がなされ、為替レートが円安に動いた。2001年に導入された量的緩和政策は、デフレに対処するためと表向きは説明されたが、真の目的は、為替介入による貨幣供給量の増加を放置することだったと考えられる。

日本で生じたのは円安バブル

円安が継続すると、円から外貨への転換が金利差による利益を生み続ける。さらに、円で借りて外貨に転換して運用するという取引が増える。これが「円キャリー取引」と呼ばれるものだ。最近では、国内の個人投資家による外貨預金、外貨建て投資信託も増えた。

さらに、借入れによって自己資金を上回る外貨投資を行なう「FX取引」(外国為替証拠金取引)にのめり込むデイトレーダーも目立つようになった。「主婦がFX取引で数億円の利益を得た」という類いのニュースも伝えられた。一般の個人投資家が投機取引に乗り出し、その成功が喧伝されるのはバブルがかなり進行した証拠である。このような取引が増加すると円売り外貨買いが増えるので、円安が進行する。つまり、円安が自己増殖するのである。

では、バブルは価格をどの程度歪めただろうか? 大ざっぱに言えば、ある程度の見当はつく。それは、「ファンダメンタルズ」との比較だ。ファンダメンタルズとは、実際の財やサービスの取引を伴う経済活動だ。GDPの推移などが示すのは、概してファンダメンタルズの動向である。

これがわかれば、バブルが崩壊したとき、価格がどこまで落ちるかを大ざっぱに評価することもできる。ファンダメンタルズとの比較で正当化できる水準まで落ちると考えればよい。

株価については、株価上昇率とGDP伸び率との比較によってチェックできる。中国やインドの場合、ここ数年の経済成長率は非常に高いとはいえ、10%程度だ。それに対して、株価は1年で7割から8割も上昇した。これは、「高すぎる」伸びだ。したがって、経済成長率で説明できる水準まで落ちたところが、正常な水準だ。

アメリカの住宅価格については、賃金などの経常的な年収との比較だ。ここ数年のアメリカの住宅価格は、一般の購入者が経常的収入で支払いができる限度を超えており、住宅価格が上昇すると仮定して初めて払える水準になっていた。バブルが崩壊すれば、住宅価格は購入者の経常支出で買える水準まで低下するだろう。

為替レートについては、「実質実効為替レート」と呼ばれるものが目安を示す。これは、「物価上昇率が低い国の為替は増価しなければならない」という関係から算出される値だ(これは「購買力平価」と呼ばれることもある。物価上昇率の差と金利差は長期的には同じになると考えられるから、この関係は前述の金利平価式と同じものである)。

ドル以外の通貨をも含めた「実質実効為替レート」で見ると、2000年以降、ほぼ継続的に円安方向の動きが続いた。その結果、昨年の夏頃には、1985年のプラザ合意直前と同じ水準の歴史的な円安になっていた。85年には、日米の貿易不均衡が大きな政治的問題となり、自動車産業からの強い圧力で、ドル安、円高、マルク高を目指す国際的な為替介入が行なわれた。そのときと同じレベルまで円安が進んだということは、これまでの数年間がいかに異常な時期だったかを示す。

昨年夏まで異常な円安になっていた

それにもかかわらず円安が大きな問題とされなかった理由は、1つには、人びとは名目レートに注目して実質レートを見ないことだ。いま1つは、アメリカが脱工業化を実現して、製造業の利害が政治に反映されなくなったことだ。

実質実効為替レート(97年3月を100とする指標)は、85年前半の90台から上昇し(円高になり)、86~88年にかけて130~140程度になった。その後90年頃まで低下した(円安になった)あと再び上昇し、95年には160を超えた。その後低下したが、98年頃を底として上昇し、2000年には140程度となった。その後は、昨年の夏まで一貫して低下し、昨年7月には90.9となった。

したがって、昨夏を基準とすれば、2000年は54%高、95年はじつに、76%も円高だったことになる。

昨年12月の実質実効レートは96.8だから、7月からの期間で6%程度の円高が生じたことになる。ただし、2000年当時の水準にまで戻るには、まだ45%程度円高になる必要がある。95年当時の水準に戻るには、65%もの円高が必要だ。

もちろん、正確に言うと、事態はこれほど簡単ではない。まず、株価や住宅価格のような資産価格は、将来にわたる価格の変化を現在の価格に織り込む。だから企業の収益が将来も上昇し続けると予測されれば、現在の株価がそれを反映して大きく上昇するのである。

そして、バブルが生じるとGDPも高くなる。また、実質為替レートも「どこが正常な水準だったか」と考えるかで結果は異なる。

だから、「バブルかどうか」の判定を科学的に厳密に行なうことは非常に難しい。実際、それだからこそ多くの人は、現在の価格上昇はまだ続くと信じて、投機的行為に走るのである。

さらに、アメリカのサブプライムローン問題に関しては、複雑に行なわれた証券化が金融取引に与えた影響があるので、住宅価格が正常化しても問題は残る(これについては、別の機会に論じたい)。日本の場合には、円安に依存しないと収益が確保できない産業構造の問題がある。

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