消費税の臨時増税は不公平で経済を攪乱

震災からの復興や社会保障のためにいかなる財源を選ぶかは、日本経済に大きな影響を与える重大問題だ。これらに関して、「復興構想会議」の第1次提言の骨子案と「税と社会保障の一体改革の集中検討会議」の改革原案が公表された。両報告以外にもさまざまな議論が行われている。しかし、多くの議論は、対象経費の経済的(または会計的)な性格を十分に考慮しておらず、その結果、不適切な財源を提案している。

復興経費と社会保障経費は、次の2点で対照的な性質を持っている。第1に、復興経費は1回限りの経費(一定期間に限定された経費)であるのに対して、社会保障経費は永続的な性格を持つ。第2に、復興経費は他の経費と切り離して独立に考えることができるのに対して、社会保障経費は他の経費と密接に関係しているため、財源全体の中でとらえる必要がある。

このような性格の違いに応じて、適切な財源を選択する必要がある。復興経費を賄う財源は、臨時的・一時的なものが望ましい。また、区分経理が可能であるため、目的税的性格を付与しやすい。

それに対して、社会保障を賄う経費は恒久的なものでなければならない。また、区分経理することは不可能であるため、目的税という扱いになじまない。

本稿においては、以上の問題のうち、消費税などの基幹税の一時的増税によって復校経費を賄おうとすると、大きな問題が発生することを指摘しよう。

消費税臨時増税は住宅購入への不当な重課

消費税を一時的に増税すると、増税期間中に不当に重い負担が発生する場合がある。これは、経済活動に大きな歪みと混乱をもたらす。この問題は、特に住宅について顕著に発生する。

復興に必要な期間は3年間であるものとし、この期間だけ臨時的に消費税率を引き上げるものとしよう。すると、その期間内に住宅を購入する人は、不当に重い負担を負う。その理由は次のとおりだ。

住宅の場合、消費税が本来課税の対象とすべきものは、毎年の住宅サービス消費である。したがって、消費税を3年間だけ増税するのなら、その3年間の住宅サービスだけが重く課税されるべきだ。しかし、毎年の住宅サービスを把握して毎年消費税を課税するのは技術的に困難であるため、現実の消費税制では、便宜的に、購入時において将来の住宅サービスを一括して課税しているのである。

このため、3年間の増税期間以外の住宅サービスも重く課税されてしまう(その半面で、増税前に住宅を購入した人は、増税期間中の住宅サービスに対する消費税負担を負わない)。住宅購入時の消費税は、数百万円にも上るため、大変深刻な問題だ。

不当に重い負担を避けるため、人びとは、消費税の臨時増税期間は住宅の購入を控え、税率が元に戻ってから購入するだろう。したがって、住宅購入が大きく落ち込む。ゼロ近くになることさえ十分ありうる(臨時増税前に駆け込み需要が発生する可能性もなくはないが、資金手当や敷地の手当などがあるので、購入時点を前倒しすることは容易ではない)。

同様の問題が、自動車や高額の家具、家電製品などの耐久消費財についても発生する(エコカー購入支援とエコポイントによって自動車と家電の購入が急増したが、それとまったく逆の現象が起こるわけである)。

以上の問題に対処するには、増税期間終了後に消費税の一部を還付する必要があるが、その手続きは煩雑なものになるだろう。

「復興財源として消費税を一時的に増税する」という提案は、消費税のこのような側面をまったく無視したものであり、「暴論」とさえ言える(なお、消費税は課税地点を限定化することも技術的に困難なので、被災地にも一律の課税をしなければならないという問題がある)。

この点に関しては、一体改革集中検討会議の改革原案も同じ誤りを犯している。消費税率を現在の5%から段階的に10%、15%に引き上げるというのだが、臨時増税の場合と類似の問題が発生する。また、中古住宅は非課税なので、税率引き上げ直前に購入し、税率引き上げ後に中古住宅として売却することが行われるかもしれない(ただし、売主が業者の場合は、中古であっても消費税がかかる)。

そもそも、社会保障のための財源手当が必要であるのに、なぜ一挙に引き上げないのだろうか? 経済的に合理的な理由は思い当たらない。

所得税、法人税の一時増税は回避できる

所得税や法人税にも類似の問題がある。たとえば、不動産などを売却した場合の譲渡益課税を考えよう。これは、資産保有期間中に蓄積されてきた資産価値の増加を、売却時にまとめて課税するものである。したがって、たまたま臨時増税時に売却益が実現すると、不当に高い負担が生じてしまう。これを避けるため、人びとは増税期間中は資産の売却を控えるだろう。

本来は、毎年発生する資産価値増加(未実現キャピタルゲイン)を毎年課税すべきなのだが、課税技術上の困難があるために、実現時(売却時)にまとめて課税しているのである。その意味で、耐久財の消費税課税と同じ問題である。

これ以外にも、たまたま臨時増税期間中に所得が実現し、不当に重い課税がなされる場合がある。退職金課税がその典型例だ。譲渡益も退職金も、課税の平準化措置が取られるため、通常の所得よりは軽課される。しかし、所得が実現した年に課税されることに変わりはない。

所得税や法人税の一時増税は、回避することも不可能ではない。特に法人利益については、発生時点をさまざまな方法でずらすことができる。同族会社的な小規模法人の場合、損金扱いされる一時払いの保険に加入してその期の利益を減らし、後の時点で解約返戻金を得るという方法がしばしば用いられる。こうした対処は一部の納税者しか利用できないという意味で、不公平なものだ。

時限減税は、通常の減税より大きな経済効果を持つことが知られている。たとえば、投資促進のための税額控除は、時限的な政策の場合のほうが効果が大きい。企業は、投資を減税期間に移すからである。時限的な増税の場合には、これとちょうど反対のことが発生するのである。

もともと、所得税、法人税、消費税などの基幹税は、時間的に大きく変動しない安定的な課税が予定されている。平均課税などの課税平準化措置が取られているのも、そのためだ。臨時的な負担増を求めるのは、基幹税のこうした基本的性格に反することなのである。

復興財源としては、以上のような問題を起こさないものを選択すべきだ。具体的には、まず電気料金に対する課税が考えられる。電気は蓄積できないので、住宅や耐久消費財の場合のような消費と課税時点の食い違いは生じない。

また、電力消費を抑制する効果もある。さらに再生可能エネルギー開発への補助や原発事故関連支出など、電力関係費用に使途を限定することも社会的な賛同が得やすいだろうが、こうした区分経理も技術的に可能である。

1回限りの経費のための財源としていま1つ重要なものは、資産の取り崩し、とりわけ対外資産の取り崩しだ。これについて、次回に述べよう。

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