中国市場での日本の地位は安泰ではない

2009年における中国の輸出は、ドイツを抜いて世界一になった。中国の輸出額は世界の10%を占める。輸入でも中国は世界の8%を占め、アメリカの13%に次いで世界2位になっている。世界経済の動向は、中国に依存するところが大きいと言われる。

中国の輸出額は、08年夏には月額1400億ドル近くあったが、08年秋に経済危機の影響で急減し、09年1月には600億ドルと半分以下にまで激減した。しかし、09年後半には世界的な景気回復を背景に持ち直し、12月には1300億ドル程度になった。10年3月の輸出額は1121億ドルだが、これは、ほぼ08年前半の値である。つまり、中国の輸出はほぼ経済危機以前のレベルにまで回復したわけだ。

中国のアメリカに対する輸出も、中国の輸出総額とほぼ同様の動きを示している(アメリカに対する輸出は、中国の輸出総額の17%程度)。すなわち、06年から08年頃まで四半期ベースでほぼ800億ドル程度で推移していたが、09年第1四半期には660億ドル程度にまで減少した。その後回復し、10年には850億ドル程度になった。つまり、ほぼ過去のレベルを回復したわけだ。07年第4四半期と比べると、現在のレベルは、3%ほど多くなっている。

これに対して日本の対米輸出は、同期間で26%ほど落ち込んだままであるから、中国の輸出が日本の輸出に比べてかなり急速に回復していることがわかる。

この理由としては、次の2点が挙げられる。第1は、中国の輸出が衣料・雑貨などの低価格製品であるため、日本の対米輸出の主力である自動車のように金融危機の影響で構造的な落ち込みにはならなかったこと。そして、第2は、元レートが08年以来1ドル=6.8元でほぼ固定されていたため、従来と同じような価格競争力を維持できたことだ。

ところで、先進国の輸入の増加はほぼ頭打ちになってきているので、中国の輸出が今後も09年後半のように急速に伸び続けることはないだろう。また、アメリカから圧力が加わっていることや、中国国内で不動産バブルが発生していることから、元の切り上げは不可避だろう。もしそうなれば、中国の輸出にかなりの影響かあるだろう。したがって、中国の輸出の10年における成長率は、09年後半に比べれば、低下せざるをえないだろう。

中国の輸入における日本の比重は低下している

ところで、09年後半の日本のGDPの回復は、外需に大きく依存したものであった。そして輸出の中では、中国に対する輸出が大きな寄与をした。したがって、日本の当面の経済情勢を考える際、対中国輸出に関心が集中せざるをえない。

そこで、まず中国の輸入の推移を見ると、次のとおりだ。中国の輸入額も、輸出とほぼ歩調を合わせて変動した。08年夏までは月額1000億ドル程度であったが、08年秋に急減し、09年1月には500億ドル程度と、半分にまで激減した。しかし、09年後半に持ち直し、12月には1100億ドル程度にまでなった。10年3月の輸入額は1193億ドルだが、これは08年夏までの値より若干高い。

ここで注意すべきは、日本から中国への輸出は10年3月で161億ドルと、ピークの8割程度の水準にとどまっていることである。右に見たように、中国の総輸入額は過去のピークを回復しているのだから、中国の輸入に占める日本の比率は、経済危機によって低下したことになる。

具体的には次のとおりだ。10年3月においては、日本の比率は13.5%である。ところが、04年においては、16.8%であった。それが、05年15.2%、06年14.6%、07年14.0%、08年13.3%と、一貫して低下してきたのである。最近の値は08年よりは若干上昇しているが、数年前と比べればかなりの低下だ。

では、日本のシェアを奪ったのは、どこであろうか? 05年におけるシェアを見ると、韓国、ASEAN、EUがそれぞれほぼ11%であった。10年3月では、韓国が10%に低下し、ASEANは不変、そしてEUが12%程度に上昇した。

したがって、シェアが増えたのは、(やや意外なことに韓国やその他のアジア諸国ではなく)EUである(その中でドイツが半分近くを占めている)。ドイツも日本と同じように、中国に対して機械などの資本財の輸出を行なっている。中国高速鉄道でドイツの技術が採用されたことは記憶に新しい。また、フォルクスワーゲンが中国で好調と言われる。ドイツと中国は、歴史的にも古い関係がある。また、ユーロが数年前に比べれば減価したことも、EUの比重向上に影響しているのだろう。

対中国輸出に内需拡大策はあまり寄与していない

日本から中国への輸出の構成を見ると、減少したものとして、「電気機器」がある。07年夏には月額3000億円を超えていたが、最近では2000億円台にまで減少した。中国の内需換気策では家電製品に対する購入支援策を行なわれたのだが、それは日本からの輸入を増やすことにはならなかったわけだ(なお、テレビ受像機が対中国輸出に占める比率は、0.01%程度でしかない)。

中国の内需拡大策で増えたと考えられるものとして、「輸送機器」が挙げられる。07年夏には月額500億円程度であったが、最近では1000億円程度にまで増加した。この項目中に含まれる自動車や自動車部品も増加した。この間の増加額は、それぞれ150億円ほどだ。これは、自動車の購入支援策が中国で行なわれたことの影響であろう。残りは、トラクターなどだと考えられる。これが増加したのは、内需拡大策によって建設・土木工事などが増加したためであろう。

いま1つ内需拡大策の影響があったと考えられるのは「原材料別製品」だ(ここには、鉄鋼、金属などが含まれる)。これは08年夏頃には2000億円程度まで増加したが、その後元の水準(1711億円)に戻った。これは、建築ブームによって増えたものが、元に戻ったためだと考えられる。

このように、日本からの輸出の中心は、輸送機器を除けば、依然として輸出産業向けのものである。この中に含まれる「化学製品」は、08年末から09年初めにかけて減少したが、その後元の水準(1538億円)に戻った。「一般機械」は、08年夏頃には2724億円で電気機器に次いでいたものが、化学製品と同様に減少したが、最近ではほぼ元の水準に戻った。

これらは、中国の輸出の減少に伴って減少したが、その後中国輸出の回復に伴って元に戻ったわけだ。この過程で、中国の内需拡大策は、日本の対中国輸出にはあまり影響していない。

つまり、因果関係は、先進国の回復→中国の輸出増→日本の輸出増→日本の回復、となっているのである。つまり、中国は内需によって自立的に成長する段階には達しておらず、中国を介して先進国の輸入動向が日本の影響しているのだ。

このように、日本の輸出は、中国の内需に向けたものではなく、これまでと同様、中国の輸出産業に向けたものだ。したがって、中国の輸出の伸びが鈍化すれば、日本の対中国輸出の伸びも再び鈍化し、それによって日本の成長も鈍化せざるをえない。

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