外需依存の景気回復に安住はできない

日本の輸出は経済危機によって大きく落ち込んだが、2009年の1、2月頃を底として回復し、09年9月頃からは月額5兆円程度のレベルで推移している。10年1月には4.9兆円となった。07年から08年の夏頃までの輸出総額は7兆円程度の水準だったので、その7割程度の水準にまで回復したことになる。

国別に見ると、対米輸出は平均より回復が遅れており、対中国輸出の増加が顕著だ。09年12月の輸出額を08年7月に対する比率で見ると、対米輸出が65%程度のレベルに落ち込んでいるのに対して、対中国輸出は83%程度の水準である。07年7月に対する比率で見ると、対米輸出が58%程度に落ち込んでいるのに対して、対中国輸出は97%程度まで回復している。年間の数字で09年の輸出額を07年の輸出額と比較すると、対世界は64.5%であり、対米が51.7%、対中国が79.7%だ。このように、輸出総額の回復は、中国に対する輸出の回復に支えられている面が強い。

また、これまでのGDPの推移を見ると、外需が回復しつつある半面で、住宅投資と設備投資は大幅な減少を続けている。したがって、09年初めからの日本経済の回復は、外需によるところが大きい。

実際、実質純輸出(実質輸出マイナス実質輸入)の対GDP比は、09年10~12月期には4.1%となった。この値は、日本では長期にわたって1%未満であったのだが、02年頃から上昇を始め、07年には5%を超えるまでになったのである(これが「外需依存」と言われた景気回復だ)。

経済危機によって輸出が急減したため、この値は急落した。すなわち、08年10~12月期には3.0%となり、09年1~3月期には1.6%にまで低下した。これによって、日本経済が大きな打撃を受けた。

ところが、4~6月期からこの値が急速に上昇してきた。したがって、「外需依存の景気回復」が前回(02年から07年)より急速なかたちで実現しているわけだ。前回はアメリカに対する輸出が中心だったが、今回は中国に対する輸出に依存して日本経済が回復している。

中国に対する輸出が牽引する経済成長

このように日本の対中国輸出の伸び率が高いが、中国のGDPの伸び率はもっと高い。名目GDPは、07年に25.7兆元であったものが、09年には33.5兆元と30.4%増大した。もし中国の経済構造が変わっていないのなら、日本から中国への輸出も、07年の30.4%増になっていて然るべきだ。現実には右で見たように約8割にとどまっているのだから、少な過ぎるとも言える。

これは、中国の内需拡大政策の影響であろう。つまり、それまでの中国の成長は輸出によるものだったので、日本から中国の輸出産業に向けた輸出が増加した。しかし、09年には国内の投資が増加することによって中国の経済が成長し、日本からの輸入はあまり必要とされなかったので、中国のGDPに対する日本からの輸入の比率が低下したのであろう(ただし、GDPの数字が水増しである可能性もある。さまざまな傍証から、この可能性は、決して否定できない)。

これを確かめるために、中国のGDPの計数と経常黒字の計数の関係を見てみよう。この比率は、07年に11.0%であったものが09年には7.8%に低下した(これはIMF予測値。中国政府発表では5.8%)。したがって、09年における形状黒字額は、07年の84%程度に縮小したことになる。仮に日本からの輸入が経常黒字と同じパタンで変化しているとすれば、日本からの輸入も07年の84%になるはずである。現実の値は80%なので、ほぼ一致する。

IMFは14年までの各国の経済計数を予測している。そのデータによると、中国の経常黒字の対GDP比は、10年には8.6%に高まる。つまり、内需主導型から外需依存型に戻るとされている。この数字と、名目GDPの伸び率予測(10年に10.0%)を用いて計算すると、10年には09年より20%程度増大することになる。

ところで、現在、日本全体の輸出のうちアジア向けの比率は約半分である(09年には54%)。仮にアジア向け輸出が対中国輸出と同率で伸びれば、その他地域が不変としても、輸出総額は10%増加することになる。そうなれば、日本の輸出総額は、07年のレベルの7割程度にまで回復する。現在、輸出はGDPの14%程度である。したがって、仮に輸出が10%増加し、GDPの58%を占める家計消費支出がGDPと同率で増加し(すなわち、消費支出に対して乗数効果が働き)、他項目が不変と仮定すれば、GDPは3.3%増加することになる。しかし、11年以降は、中国の経済収支対GDPの比率が安定するので、日本からの輸入伸び率も低下し、その結果日本の成長率は1%台になるだろう。

前回の外需依存景気回復とは違う

これは、「外需依存の景気回復」という意味では、02年からの景気回復と同じだ。ただしいくつかの点で大きな違いがある。

第1は、輸出品目の違いだ。前回は、アメリカに対する自動車の輸出が大きなウエイトを占めていた。しかし、対中国輸出では、自動車のウエイトは非常に小さい。大きなウエイトを占めるのは、化学製品、原材料、機械などの中間財だ。これらは、中国の輸出産業に向けたものである。

第2の違いは、為替レートによるメリットを享受できないことである。前回は、実質対ドルレートが大幅な円安になることによって、日本製品の価格競争力が上昇した。しかし、対中国輸出については、そうしたメリットが期待できない。人民元の対米ドルレートは、(介入政策の結果として)08年の夏以来、1ドル=6.82元程度で変化がない(それ以前は、07年1月以来、1ドル=7.7元程度で変化がなかった)。この間に円はドルに対して増価しているから、円は元に対して増価していることになる。このため、輸出企業の利益は目立って増大しないだろう。また、賃金や設備投資も増えないだろう。

第3の問題点は、中国国内の経済情勢が安定的とは言えないことだ。とりわけ、不動産バブルの行方が懸念される。バブル抑制のために金融引き締めを行なえば、元が増価し、その結果中国の輸出が減少する可能性がある。日本の対中国輸出は中国の国内需要に向けたものではなく輸出産業向けのものであるため、これによって日本からの輸出が減少する可能性がある。元高は、日本からの輸出の価格競争力を高め、また(元建て価格が不変なら)円での収入を増やすことにはなるが、同時にこのような問題をもはらんでいるのだ。

差し引きどのような結果になるかは、価格弾力性の違いによるので、一概には言えない。ただし、価格弾力性が高いのは中国の輸出だろうと考えられるので、元高は日本から中国への輸出を減らす可能性が高い。

以上の諸点を考慮すれば、対中国輸出に依存する成長には、さまざまな問題があることがわかる。他方で、現在の日本の内需は、政府の購入支援策で支えられている面が強く、はずせば減少する。だから、「このままで経済は回復する」と考えるのでなく、日本国内の内需を開拓する必要がある。

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