GDP統計が示すのは回復でなく停滞

先頃発表された2009年第4四半期(10~12月)の実質GDP成長率は、年率換算で4.6%になった。この数字だけを取り出せば、日本経済がマイナス成長から抜け出し、順調な成長路線に乗ったように見える。しかし、実体はまったく逆なのである。

まず、アメリカと比較してみよう。アメリカの実質経済成長率(年率換算値)は、09年第3四半期に2.2%、第4四半期には5.7%である。実額では、第4四半期には14兆4634億ドルとなっている。これは、過去のピーク(08年第3四半期)14兆5467億ドルとほぼ同じ値だ。そして、07年の14兆0776億ドル、08年の14兆4414億ドルを上回っている。つまり、アメリカ経済は、09年第4四半期において、経済危機からの脱却を果たしたと見ることができる。

これに対して日本の実質経済成長率(年率換算値)は、09年第3四半期には0.0%であった。第4四半期の実額は、532兆5165億円だが、これは過去のピーク(08年第1四半期)567兆2573億円に比べると、まだ6.1%ほども低く、05年上半期頃の値と同程度だ。つまり、アメリカが経済危機から脱却したのに対して、日本はまだ5年ほど前の水準をさまよっているのだ。

次のようにも言える。09年第3四半期の年率換算実質GDPは526兆5142億円なので、第4四半期のGDPが過去のピークレベルに回復するためには、第4四半期における年率換算成長率は、34.7%になっていなければならなかったのである。4.6%などという数字で喜ぶわけには、まったくいかないのだ。

なお、これまでの年間実質成長率を見ると、アメリカは、07年2.1%、08年0.4%、09年-2.4%となっている。この3年間の累積成長率は、0.5%だ。これに対して日本は、07年2.4%、08年-1.2%、09年-5.0%であり、この3年間の累積成長率は、-3.9%だ。つまり、この3年間で、アメリカは若干成長したのに対して、日本は4%近く落込んでしまったわけだ。

支えをはずせば大きく落込む

より大きな問題は、日本の第4四半期GDPは、緊急避難的政策で支えられている面が強いことだ。

実質家計消費支出の年率換算伸び率が2.8%となっており、GDPの伸びに大きく寄与している。ところが、その中身を見ると、耐久消費財の伸びが、なんと40.5%という異常な値になっているのだ。言うまでもなく、これは政府による自動車やテレビの購入支援策の影響である。

他方で、非耐久財の伸びは0.9%、サービスは-1.2%である。だから、支援策がなければ、耐久財の伸びも0%近く、またはマイナスになった可能性が強い。政府支援策は、自動車やテレビの生産かさ上げを通じて、設備投資をもかさ上げしているだろう。だから、第4四半期GDP成長のうち、少なくとも半分近くは、政府の施策によって支えられたものなのだ。つまり、本項の冒頭で「マイナス成長から抜け出した」と述べたが、それは、「政府の支援策が続く限りは」という意味である。

しかし、購入支援策はもともと緊急避難的なもので永続すべきものではない。事実、アメリカやドイツでも自動車購入の支援策が行なわれていたが、09年の夏頃までに終了している。いまだに購入支援策によって経済活動の底上げを続けているのは、きわめて不自然な姿だ。

その支えをはずせば、日本経済は、一挙に落込んでしまう。成長率は、ゼロに落込むだけではすまない。購入支援策で需要の先食いをしているために、それまでの増加分がマイナスとなって跳ね返ってくる。

簡単な数値例でこのことを説明しよう。今、毎四半期の売上高は1であるものとする。購入支援策が1年間行なわれ、その後2年間の需要の20%を今年に前倒しすることができたとしよう。すると、売上高は、今年は毎四半期1.4となり、その後2年間は毎四半期0.8となる。対前年伸び率で見れば、今年いっぱいは毎四半期40%となるが、その後1年間は-43%に落込む。現在の日本で起きているのは、このようなことなのだ。

つまり、この政策は、売上高の変動を激しくするだけの効果しか持たない。だから、将来の日本経済に大きな不確定要因を与えていることになる。しかも、日本の製造業の生産性を向上させる効果は、まったくない。それどころか、製造業を政府支援に依存する体質にしてしまうだろう。日本の農業は、政府の補助に依存することで生き延びてきた。製造業までもがそうなってしまっては、日本経済は破滅してしまう。そうした事態に陥ることを避けるために、購入支援策というようなネガティブな政策は、一刻も早く停止すべきだ。

低迷の原因は企業のビジネスモデル

最初に述べたように、09年における日本とアメリカの経済パフォーマンスには、大きな違いがある。こうした違いが生じる原因は、産業構想の違いである。

アメリカでは、経済危機によって消費や住宅投資が減少したが、それは主として輸入を減少させた。国内の脱工業化が進展しているために、それまでの需要増を主として輸入の増加で賄ってきたからである。言い換えれば、需要の増減は、国内生産にはあまり大きな影響を与えていないのだ。

それに対して、アメリカの消費が落込むと、日本の輸出が落込み、日本の生産が落込む。このため、アメリカに原因があったにもかかわらず、日本が痛手を受けた。そして、アメリカ経済が回復しても、日本の輸出が回復したわけではないので(日本の現在の輸出は、ピーク時の7割程度である)、日本は落込んだ状態から脱却できない。

このように、09年第4四半期GDP統計は、日本経済が回復しつつあることを示しているのはなく、停滞している(正確には、破滅しつつある)ことを示しているのである。統計データが発しているシグナルを読み違えてはならない。

個別企業の最近の決算データを見ると、このことをより明瞭に読み取ることができる。すなわち、グーグルやアップルなどアメリカの先端企業の09年第4四半期の利益は、過去最高を記録しており、ROA(総資産利益率)は20%を超えている。それに対して、日本の自動車産業や電機産業は、これまでの赤字からはやっと脱却したとはいえ、09年第3四半期における利益は、ピーク時の7分の1以下に落込んでいる。

最近の新聞には、「企業の利益回復鮮明」という見出しが躍っているのだが、元のレベルに回復するには、7倍に増加しなければならないのだ。

ROAで見ると、第4四半期においても、1%台、あるいはそれより低いレベルをさまよっている企業がほとんどだ。

日本企業の低収益は「デフレのため」と言われることが多い。しかし、下落しているのは製品価格だけではない。原材料価格も賃金も下落している。デフレが原因だとするのは、責任転嫁にほかならない。政府の経済政策が不十分だとする議論もそうだ。すでに述べたように、現在の支援策は、過剰である。基本的な問題は、日本企業のビジネスモデルにあることが認識されねばなるまい。

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