民主党に求められる整合的政策の策定

政権を取った民主党に緊急に求められるのは、経済政策の策定だ。「子ども手当」「出産一時金」「公立高校無料化」などの選挙用スローガン列挙からは一刻も早く脱却し、整合的で実効性のある政策を、現実的な財源手当とともに構築しなければならない。

まず、短期的な課題と長期的な課題を正確に把握することが必要だ。「短期的」とは、今後1年間程度の日本経済の動向との関連で必要とされる対策である。

その最大の課題が雇用にあることは、疑いない。日本の失業率は5.7%に上昇し、戦後最悪値を更新した。膨大な量の企業内失業が存在することを考えると、失業率が今後さらに上昇を続けることは確実である。

自民党政権は、昨年末以来の経済対策において、「雇用調整助成金」を拡充して過剰労働力を企業内に温存させる政策を取った。民主党政権がまず判断すべきは、この方向を継続するのか、それとも方向転換するかである。

継続すれば、失業率の急増を抑えることはできる。しかし、給付期間には限度があるので、単に現在の制度を維持するだけでは不十分であり、拡充が必要である。それには、膨大な予算措置が必要になる。これは、来年度予算編成において最大のポイントの1つになるだろう。

しかし、雇用調整助成金はあくまでも一時しのぎの緊急避難であり、これによって失業問題の本格的な解決を図ることはできない。当面はこの制度に頼るとしても、他方で雇用を積極的に拡大する方策が考えられなければならない。民主党はマニフェストの中で「手当付き職業訓練制度」を提案したが、これは雇用調整助成金の名称を変更した程度のものにすぎない。職業訓練が必要なことは言うまでもないが、雇ってくれる企業があるかどうかが大問題なのである。

民主党はマニフェストで短期派遣の禁止や最低賃金引上げをうたっているが、これが雇用をさらに減少させることは、ほぼ確実である。民主党は一刻も早く、雇用に関する経済メカニズムを理解してほしい。

現在の日本で、労働力が数百万人の単位で不足しているのは介護部門であるから、ここで雇用増加を図ることが当然考えられる。ただし、大きな問題は、雇用条件の改善だ。労働力が必要とされながら確保できないのは、賃金水準が低いからである。

自民党政権は、4月から介護報酬を3%引上げた。しかし、現場の労働者の賃金には十分反映されていないと言われる。しかも、この程度の改善で労働力を吸収できるかどうかは、大いに疑問だ。民主党はマニフェストで4万円引上げをうたっているが、これで事態が大きく変わるとも思えない。

もちろん、雇用を創出できる分野は、介護に限らない。しかし、本格的な雇用創出の実現には、さまざまな制度改正と予算措置が必要だ。これに関する検討はすぐにでも開始されなければ、予想される失業率の上昇を食い止めることはできない。

日本の産業構造をどう改革するのか

失業率が上昇するのは企業が過剰労働力を抱えているからであり、その原因は、日本経済全体の需要が昨年秋からの急激な経済効果で急減したからだ。

自民党政権はこれに対して、エコカーへの買い換えやエコ家電などに対する補助策を講じてきた。民主党政権が判断すべき第2の短期的課題は、この方向を継続するのか、あるいは方向転換するのかである。

これらは、言うまでもなく、製造業の企業に対するあからさまな補助策である。これを継続することは、民主党政権の基本的姿勢にかかわるだろう。また、これらは一定の効果はあったものの、短期的な需要の先食いにすぎず、経済全体に対する効果も大きくない。

現在の日本企業は、製造業を中心として構造的な利益減少に直面している。これをどう立て直すかは、日本経済のエンジンをどう再構築するかということであり、経済政策の基幹だ。需要補助策を継続するのか、それともまったく別の方向に転換するか。この決定には、日本経済のメカニズムに関する正確な理解が必要とされる。

基本は、「輸出志向的製造業を中心とする日本経済の産業構造を維持するのか、再構築するのか」ということである。わかりやすいかたちでいえば、日本経済団体連合会構成企業を中心とする産業構造を維持するのか、それとも方向転換するのか、ということだ。

日本経済は、2002年以降、アメリカの輸入拡大と円安によって輸出を拡大し、経済成長を実現した。これが「戦後最長」といわれた直近の景気回復だ。

しかし、アメリカのバブル破綻でこれは頓挫した。そして、これらの産業に対する需要は、容易に回復するとは思えない。成長のエンジンが存在しない限り、雇用問題を根本的に解決することはできないし、法人税の落ち込みを回復させることもできない。したがって、産業構造の再構築が、長期的な課題として最も重要な意味を持っている。

年金財政をどう立て直すのか

マニフェストにおいて民主党は、「新規施策に必要な16.8兆円はムダづかいの排除などで調達する」とした。ムダづかい排除は確かに必要だが、財源確保にはまったく不十分だ。

それに、必要な財源は新規施策のためのものばかりではない。緊急に必要なのは基礎年金の国庫負担率引上げに要する財源だが、これはすでに決定された施策である(09年度予算では、いわゆる埋蔵金で手当てされている)。さらに、社会保障制度は、現行制度を維持するだけでも支出が増加するので、財源手当が必要となる。それに加え、企業利益の激減による法人税収の激減は、緊急に対処が必要な課題となっている。消費税率の引上げが論じされているが、問題はそれだけではない。それは、必要とされる財源措置のほんの一部にすぎないのだ。

検討すべき中心は、年金だ。記録問題はもちろん重要だが、年金問題の基幹ではない。基本的な問題は、年金財政を持続可能なものに再構築することである。現在の年金財政は長期的に維持できない。さらに、非正規労働者の増加によって、厚生年金保険者数が頭打ちになっているため、年金財政はこれまで考えられてきたよりさらに深刻な問題に直面している。

年金財政方式としては、保険料方式から全額税方式への転換が議論されている。全額税方式のためには新しい財源の確保が必要なこととはいうまでもないが、それ以前の問題として、この方式がはたして望ましいものかどうかを判断しなければならない(それに加え、これまで保険料方式で運営されてきた制度を変更するには、きわめて複雑で長期にわたる経過措置が必要とされることにも注意が必要である。

まず、税方式を主張しているのがどのような勢力下を見極める必要がある。これを主張しているのは、企業なのである。それは、厚生年金の雇用主負担がきわめて重い負担になるからだ。それから逃れる方策として、企業はこれまで海外立地、非正規雇用者の拡大などを進めてきた。それに加えて、制度そのものの変更を求めているのである。したがって、税財源制度は、きわめて自民党的、プロ企業的な政策だ。民主党がこの点を見抜けるかどうかが、まず問われるところである。

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