神風に頼るしかない日本経済の行方

内閣府が8月17日に発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値(季節調整値。以下同)は、実質成長率が前期比0.9%の増、年率換算で3.7の増となり、5四半期ぶりにプラス成長に転じた。輸出や鉱工業生産指数の動向から、GDPがプラス成長に転じることは予測されていたが、そのとおりの結果になったわけである。なお、名目成長率は-0.2%(年率-0.7%)となった。

GDPのプラス成長をもたらした最大の要因は、外需である。1~3月期には前期比22.5%の減少だった輸出が、今回は6.3%の増加になった。他方で、輸入は5.1%減少した。このため、純輸出(貿易黒字)が前期のほぼ倍となり、これがGDP成長に大きく寄与した。

ただし、このニュースに対して、株式市場はプラスには反応しなかった。それどころか、日経平均株価は、前営業日比328円72銭安という4月以降最大の下落を示した。このニュースはすでに織り込みずみだったためでもあるが、それ以前に、これは詳しく見れば、格別明るいニュースとは言えないからである。なぜなら、GDPの水準は、依然として低いままだからだ。

4~6月期のGDP(年率)は526兆円であり、これは2008年4~6月期の563兆円より6.6%ほど少ない。ピークであった08年1~3月期に比べると、7.6%も少ない。つまり、GDPは低い水準に落ち込んだままなのである。1~3月期の522兆円に比べて増加したのは事実だが、差はごくわずかだ。「回復」というよりは、「底をはっている」というほうが現実をよく表している。

つまり、急激な落ち込みは終わったが、落ち込んだ先は低いのだ。これは、輸出や鉱工業生産指数など、他のほとんどの経済指標についても言えることである。だから、経済危機そのものが終了したとか、将来に向かっての展望が開けたとか評価することは、できない。

自律的な回復にはほど遠い現状

問題は、これからどうなるかだ。需要項目を見ると、個人消費と公共投資もプラス成長に貢献した。個人消費は前期比0.8%の増加、公共投資は8.1%の増加となっている。ただし、内需全体では、寄与度は-0.7%だ。これは、設備投資が4.3%減少、住宅投資が9.5%の減少になったことの反映だ。

個人消費は最大の需要項目である。また、設備投資は将来の成長に重要である。しかし、雇用と企業収益に関しては、依然として厳しい状態が続いているため、これらの項目が今後本格的に増加する見通しはつかない。また、公共投資は政策によって動かすことができるが、財政赤字がすでに巨額になってしまっていることを考えると、今後も増加を続けられるかどうかはわからない。

では、09年度を通じての実質成長率はどうなるだろう。前期比0.9%の成長が続けば08年度比2.1%減になるが、そうはならないだろう。横ばいとすると、3.4%減になるが、今年度後半に再びマイナス成長に陥る可能性もある。政府の経済見通しは09年度が-3.3%だが、この範囲に収まるかどうかは、まだわからない。IMFは、7月8日の予測で09年の日本の経済成長率を-6%としているが、そうなる可能性もある。

以上で見た日本の状況を、諸外国と比べてみよう。

アメリカの4~6月期実質GDPは前期比年率-1.0%となり、4四半期連続のマイナスとなった。日本はプラス成長に転じたため、一見すると、日本のほうがアメリカより早く回復しているように思えるかもしれない。

しかし、4~6月期のGDP12兆8924億ドルは、08年4~6月期の13兆4153億ドルの96.1%である。つまり、1年前の値と比べれば、日本のほうが大きく落ち込んでいるのだ。日本がプラス成長になったのは、これまでの落ち込み方が激しかったことの反動なのである。

イギリスの4~6月期実質GDPは、前期比0.8%の減である。しかし、1年前に比べれば5.6%の減だ。つまり、イギリスの場合も、マイナス成長は続いているが、1年前との比較で言えば、落ち込みは日本よりは緩やかなのだ。

ユーロ圏の域内実質GDPは、4~6月期には前期比0.1%減となり、1~3月期の2.5%減からマイナス幅が大きく縮小した。EU27カ国では前期比0.3%減だった。なお、ドイツ、フランスはプラス転換している。

以上を総合すれば、「欧米は依然低迷を続けているが、日本は欧米に先駆けて回復した」と考えることはできない。日本経済は、アメリカ初の経済危機によって、アメリカよりも深い傷を負っていることになる。

なお、アジアでは、回復が顕著だ。4~6月期のGDPは、シンガポールが前期比年率20.7%増、中国が前年同期比7.9%増となった。

外需依存では、自らの運命をコントロールできない

石油ショック後にマイナス成長になったことがあるが、今回はマイナス成長が4期続いた。そして、本格的な成長の道筋はまだ見えない。したがって、日本経済が戦後最悪の事態に陥っていることは間違いない。

さらに問題は、依然として外需依存から脱却していないことだ。今回も寄与率で言えば、圧倒的に大きいのは輸出の増である。実質輸出はほぼ65兆円であり、実質公共投資21兆円のほぼ3倍の規模になっている。

だから、輸出動向の変化は、同率の公共投資の変化の3倍のウエイトを持つ。日本経済は、輸出が減ればGDPが減少し、輸出が増えれば持ち直すという構造になってしまっている。つまり、今後の動向は、外需次第なのである。

日本経済は海外の状況に振り回されるわけであり、自律的に回復しているわけではない。設備投資と消費支出が成長を牽引するのでなければ本格的な成長とは言えないが、すでに見たように、そうした事態にはなっていない。

言うまでもないことであるが、外需を直接にコントロールすることはできない。つまり、日本人の誰も、自国経済の行方をコントロールできないのだ。他力本願であり、神風に頼るしかない。経済成長率の数字の大きさもさることながら、このことのほうが遙かに重要である。09年度の成長率が政府見通しのとおりになるかどうかも、輸出の動向次第である。

麻生太郎総理大臣は、日本経済は2年間で回復すると言うが、そうなることを期待すると言うだけのことだ。民主党もばら撒きだけで、経済政策と言えるような政策は提示していない。戦後最悪の事態に対して、政治はまるで見当違いのことしか議論していない。そうなるのも当然で、日本の政治がどう動いたところで、日本経済の将来を左右することはできないのだ。

それより、アメリカの大統領が何をやるかのほうが重要なのだ。だから、株式市場も、アメリカ経済の動向には神経を使うが、日本の政治情勢にはほとんど無関心だ。

われわれが選挙で誰を選ぼうがわれわれの将来にはあまり関係がないが、アメリカ人が誰を大統領に選ぶかは、日本の将来に大きな影響を与える。

自分たちの運命を自分自身では決めることができず、他人の決定で決まってしまうというのは、なんと屈辱的なことだろう。

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