世界経済の調整が中国にも及び始めた

中国国家統計局の発表によると、11月になって中国の工業生産が急減速している。対前年比で、粗鋼12.4%減、内燃機関45.5%減、トラクター23.2%減、小トラクター42.4%減、火力発電16.6%減などとなっている。

これは、不動産投資の縮小が主因と説明されているが、世界経済危機が中国にも影響を与え始めたことの結果でもあると考えられる。中国は、貿易依存度が高い国なので、世界経済の変化によって大きな影響を受けるのである。

2006年では、輸出がGDPの36.9%をしめる。これほど高い依存度は、大国経済としては珍しい。日本やアメリカのようにGDPが巨大な国は、貿易依存度が低い(06年における輸出依存度は、日本が14.9%、アメリカが7.8%だ)。貿易依存度が高い国には小国が多いのだが、中国はそれと同じようなレベルだ。

これは、1970年代末に「改革開放」として始まった中国の経済発展が、最初から持っていた特性だ。中国の経済発展は、中国に内在する力によってではなく、外資が経済特区に輸出産業をつくったことで始まった。この点は、日本の高度成長とは大きく異なる。そして、今に至るまで、経済の3分の1以上が、国民の生活とは直接には関係のない活動を行なっているわけだ(一時、日本が漁業で「中国に買い負けする」と言われたことがあるが、漁獲さえ、国内消費のためのものではなく、ヨーロッパに向けて輸出するためのものだった)。

しかも、最近では、輸出に対する依存度は、さらに高くなっている。すなわち、02年から06年までのGDP増加の54.6%は輸出の増加である。

貿易構造を見ると、輸入における対日依存と輸出における対米依存が目立つ。具体的には、07年の輸入総額0.96兆ドルのうち、日本からの輸入が0.13兆ドル(14.0%)、アメリカからの輸入が0.07兆ドル(7.3%)であり、輸出総額1.22兆ドルのうち、日本への輸出が0.10兆ドル(8.4%)、アメリカへの輸出が0.23兆ドル(19.1%)である。つまり、日本に対して若干の入超、アメリカに対して大幅な出超となっている。

このように、輸出面でのアメリカ依存がきわめて高いので、アメリカの経済事情のへっかによって、きわめて大きな影響を受ける(なお、現在では中国の最大の輸出先はEUである)。冒頭で述べた工業生産の急減速は、その影響がいよいよ顕在化し始めたことを示している。

日本も外需依存を高め中国への依存を高めた

日本はもともとは貿易依存度が低い国だった。しかし、03年以降だけを取ってみれば、貿易依存度がきわめて高くなった。

実質純輸出の対GDP比は、02年には1.42%でしかなかったが、07年には5.00%にまで上昇した。02年以降の景気回復は、純輸出の増加によって実現したものだったのである。

日本の貿易構造の近年の大きな変化は、輸出面での対中国依存度が高まったことだ。対中国の輸出総額は04年頃まで年率20%を超える高い伸びを示した。その後伸びは若干低下したが、06年頃から再び高まり、07年秋まで年率20%程度の高い伸びを続けた。

この結果、日本の総輸出における中国の比率は16.8%となり、アメリカ17.5%に次ぐ値となっている。中国はいまや、日本の最大の輸出先の1つなのである。

日本から中国への品目別の構成を見ると、最も大きいのは電気機器であり、対中国輸出総額中の3割近くを占める。次いで、一般機械、原料別製品(鉄鋼、非鉄金属、金属製品など)が、それぞれ2割弱を占める。自動車などの輸送機器は、7%程度である。これらで全体の約7割を占める。

これからわかるように、日本から中国への輸出は、最終財ではなく、中間財や資本財だ。中国の内需に関連するというよりは、中国の輸出のためのものだ。これらを用いて中国が最終消費財を生産し、それをアメリカや日本に輸出するという構造になっている。

あるいは、日本から中国への輸出が中国を経由してアメリカに行くと言ってもよい。日本は、中国の安い労働力を使って対米輸出を行なっているわけだ。したがって、中国の対米輸出が増加すれば、日本から中国への輸出も増加する。これまで数年間に起こったのは、そうしたことであった。

では、最近時点での状況はどう変化しているか?

日本の対中国輸出が減り始めた

まず、中国の輸出も輸入も減少している。中国税関総署の発表によると、11月の輸出が前年同期比2.2%減少し、1150億ドルとなった。中国の輸出額が前年同月を下回るのは01年6月以来である。アメリカ向けは、6.1%の減となっている。輸入は17.9%という大幅な減少となり、749億ドルになった。これには、石油価格の低下の影響もあるが、中国内需の減少、そして輸出の減少に伴う輸入減も大きい。

なお、輸出減少が中国国内の中小企業の倒産を増加させているので、輸出競争力を高めるため中国は人民元の切り下げ誘導を行なっているようである。中国は従来人民元をドルに固定するというドルペッグ制を取っていたが、05年7月に制度改革を行ない、複数通貨から構成される通貨バスケットを参考にしながら為替相場政策を行なう制度へ移行した。そして、08年7月には1ドル6.8128元になっていた。これは、改革直後の1ドル8.11元からは19%の上昇だ。しかし、11月初めには、1ドル6.845元まで下落している。

日本の対世界輸出が減り始めたのは08年6月であり、はっきりしたかたちで生じたのが10月である。中国は少し遅れたが、同じような傾向を示し始めたことになる。すでに述べたように、日本の輸出中での中国の比重は大きくなっているから、中国が輸入を減少させると、日本は大きな影響を受けざるをえない。

つまり、アメリカの輸入の減少は、日本からアメリカへの直接的な輸出を減らすだけでなく、中国を経由しても日本の輸出を減らすことになる。だから、日本は、二重の影響を受けることになるわけだ。

日本から中国への輸出は、07年秋以降は、伸び率が1ケタ台の月が多くなっていたが、08年10月にはついにマイナスになった。これまで20%を超える伸び率を示していたものがマイナスになるのだから、その影響はきわめて大きい。

品目別の動向を見ると、電気機器は07年秋頃からすでに減少傾向を示していた(なお、原料別製品と輸送機器は、いまなお増加を続けている)。ただし、中国の11月の工業生産は、全体では前年同月比5.4%の増であり、本格的な生産調整はこれからだ。これは、世界経済の調整プロセスの始まりである。それは、アメリカの経常収支赤字が持続可能と見なしうるレベルに縮小するまで続くだろう。

しばらく前に、中国やインドがデカップリングするという考えがあった。こうしたことが言われるのは、アメリカ金融危機の影響を受けない国を見つけ出し、そこへの輸出で輸出立国モデルを継続しようという期待があるからだろう。しかし、中国に生じつつあることを見れば、そのような方向は不可能であることがわかる。

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