金融・財政の機能不全は日本経済を長期に蝕む

財務省が11月5日に発表した4~6月期の法人企業統計によると、金融機関を除いた全産業の経常利益は、前年同期比5.2%減となり、4期連続で減少した。製造業の全業種で経常利益が減少しているが、なかでも一般機械(19.6%減)、情報通信機械(29.3%減)の落ち込みが顕著である。

10月末から11月初めに公表された上場企業の決算見通しでは、日本経済が今後激動にさらされることが明確に示された。日本経済新聞社の調べによると、上場企業の2008年4~9月期連結経常利益は、前年同期比20.5%の減となる。

ただし、これは、衝撃の第一波にすぎない。経済への本格的なショックは、これから生じる。第二波は、金融機関と財政の状況悪化である。

金融機関への影響は、不良債権の増大と株価下落による自己資本の減少によって生じる。これは銀行決算に既に表れ始めている。11月18日までに出揃った大手銀行6グループの9月中間決算では、連結純利益の合計は3983億円で、前年同期比57%の減となった。09年3月期通期も、前期比50%減となる見込みだ。

こうなった第一の原因は、融資先の倒産や業績悪化による不良債権処理損失の増大だ(損失は、大手合計で前年同期の2倍近い7000億円)。台には、保有株式の価格下落だ(株の評価替えによる損失は計3000億円)。『日本経済新聞』(11月19日付)によると、株式含み損益がゼロになる日経平均株価は、三井住友が7500円程度だが、三菱UFJは9000円程度、みずほは9500円程度で、現在すでに含み損状態にあるものと見られる。

地方銀行の状況はもっと深刻だ。上場地方銀行87行の31%に当たる27行が純損失に転落している。生命保険会社でも、保有株式の価格低下によって資産が劣化している。

これまで、日本の金融機関の傷は浅いといわれてきた。確かに、サブプライム関連の資産保有が多額でなかったのは事実だ。しかし、実体経済の落ち込みを反映して、金融機関にこれらか影響が及んでゆくのである。時価会計の適用緩和は、金融機関の資産劣化がすでにかなりの程度深刻化していることをうかがわせる。アメリカでは金融機関の問題がまず顕在化し、実体経済の悪化がそれに続いた。日本では逆に、まず実体経済の悪化が進行し、それが金融機関に影響を与えている。このようにメカニズムは異なるものの、日本の金融機関がアメリカに劣らず深刻な問題に直面していることに疑いはない。

企業業績悪化で税収が激減する

もう1つの問題は財政だ。08年度予算における税収は53.6兆円であり、そのうち法人税が16.7兆円とされていた。しかし、財務省が11月4日に発表した08年度上半期(4~9月)の税収実績は、状況が非常に厳しいことを示していた。税収が前年から大きく落ち込んでいるのだ。

一般会計税収は前年同期比5.1%の減にとどまっているものの、法人税の落ち込みはきわめて激しい。その税収は、前年比でじつに40.9%もの減を示しているのである。しかも、上半期には、まだ企業業績の悪化は本格化しておらず、下半期において急激に業績が悪化するのだ。このため、08年度には、法人税収が激減する可能性がある。財務省は5兆円の減収としているが、それを超える減収が発生する可能性は強い。

法人税は、もともと景気の変動によってきわめて大きく変動する。過去の推移を見ると、1989年の19兆円をピークとして減少し、02年には9.5兆円まで低下していた。それが、02年以降の景気回復によって増加してきていたわけである。この動向が再び逆転し、税収が減少過程に入る可能性が強い。

今後の企業利益の落ち込みを考えると、法人税収はゼロになるどころか、マイナスになる可能性さえある。マイナスとは奇妙な表現だが、法人税では欠損の繰り越しが認められているので、将来利益が回復しても、現在生じた欠損によって将来の法人税が減少するのである。実際、大手銀行は、住友信託銀行を除いては、いまだに法人税を払っていない。これが今後も続く可能性がある。

公債発行額は、99年の37.5兆円をピークとして、ここ数年は低下していた。07年度の税収は、53.5兆円の当期見積もりに対して実際には51.0兆円にとどまったものの、予算の使い残しで税収減の穴埋めをし、赤字国債の増発は免れた。

しかし、今年度は、予算における公債発行額25.3兆円ではとうてい収まらない。すでに景気対策で1.8兆円の歳出増が決まっているし、さらに年末にかけて定額減税などが数兆円規模で求められる可能性がある。そして、すでに述べたように税収が激減する。従って、赤字国債の増発は不可避だ。公債発行額が30兆円を超え、公債依存度は、再び50%近い異常な水準になる可能性が強い。

埋蔵金論争に見る財政の末期的状況

財政がこのような危機的状態に直面しているとき、政治の世界では「埋蔵金論争」が行なわれている。そして、09年4月から基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引上げる財源として、「埋蔵金」を充てることが検討されている。今回対象とされたのは、財政投融資特別会計の余剰金だ。これについて簡単に説明しよう。

同会計は、10年債を中心とする国債(財投債)で資金を調達し、政策金融機関や地方自治体に20~30年の長期間固定金利で融資している。このように調達期間と運用期間が一致していないため、金利上昇期に調達コストが上昇することに備えて、「金利変動準備金」を積み立てている。現在のような低金利下では、貸出金の利息が債券の利払いを上回るため差額が収入となり、これを積み立てているわけである。特別会警報では、準備金は総資産の5%に達するまで積み立てるよう定めている。それを超える部分が余剰金で、09年度は約3兆円となる。他方で基礎年金国庫負担率を2分の1に引上げるためには年間約2兆3000億円の財源が必要になる。そこで、余剰金をとりくずそうというわけだ。

言うまでもないことであるが、余剰金の取り崩しは1階限りの財源である。他方で、国庫負担は毎年度発生する。今回の措置は1年だけの措置とされているが、税収が激減してゆくなかでこうした一時的財源に頼るのは、大変危険である。そもそも、基礎年金の国庫負担率の引上げだけが決定されながら、その財源がこれまで手当てされてこなかったのである。これまで先延ばしにされてきた難問に対して、あと1年だけ先延ばししようというわけだ。これは、「財政に関しての重要な決定はもはやできない」という末期的状況に陥っていることの証拠以外の何物でもない。

財政や金融のこのような機能不全は、日本経済を蝕んでゆく。90年代以降すでにそうした状態になっているが、状況はますますひどくなる。せいぜいが現状維持で、積極的なことはなにもできない。とりわけ、将来に向かって施策を講じることができない。そして、財政・金融と実体経済が互いに関連しながら、問題を拡大・増幅させてゆく。日本経済は、衰退の一途をたどるしかない。

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