マイナスもあり得る2014年度の成長率

2014年度の実質経済成長率は、マイナスになる可能性が高い。その理由は、GDP統計が示すデータに見いだせる。13年7~9月期の実質GDP成長率(季節調整済み年率。以下同)は1.1%だったが、公的固定資本形成(公共投資)の寄与度が1.2%あった。つまり、経済成長は公共投資に支えられたものだったのだ。実際、公共投資の成長率は、4~6月期から引き続いて30%近い異常な高さであった。仮にこれがなくなれば、7~9月期において経済はマイナス成長に落ち込んでいたはずなのである。

ところが、14年度における公共投資は、前年度比マイナスになる。その理由は、政府の経済見通しにおいて、公需寄与度が0.2%という非常に低い値に想定されていることだ。公需とは政府最終消費支出と公的固定資本形成である。前者は後者の5倍程度のウエイトがあり、伸び率は0.5%程度である。したがって、公需全体の寄与度が0.2%になるためには、実質公共投資の伸び率はマイナスにならなければならない。計算をしてみると、年率で▲5.5%になる必要がある。

実質公共投資の伸び率がマイナスになるというのは。一般に持たれている印象どは大きく異なるだろう。なぜなら、13年12月に閣議決定された14年度予算案では、公共事業費は前年度比12.9%の増となっているからである。これについての報道は、「公共事業が大幅増」というものであった。

それにもかかわらず、実質公共投資の伸び率がマイナスになってしまうのはなぜだろうか。これには、次の二つの原因がある。

第1は、14年度予算案の数字には、社会資本整備事業特別会計の一般会計統合による増加分がカウントされていることだ。これを差し引くと、対前年度比増加率は1.9%に低下する。

第2は、前年度当初予算からではなく、補正予算とセットの総額で比較する必要があることだ。いわゆる「15ヵ月予算」で見ると、14年度の公共事業予算は、13年度を3兆円程度下回る。12年度補正予算では10兆円超の景気対策を行ったのに対して、13年度補正予算案での計上額は少ないためだ。

以上の理由によって、仮に公共投資以外の条件が13年7~9月期から変わらないとすれば、14年度の実質経済成長率はマイナスになるはずなのである。実際には、以下で述べるようないくつかの要因が経済成長率をさらに押し下げると考えられるが、「消費税増税の影響を考えなくともマイナス成長になる」というのが、最も重要な点だ。

根拠なきオプティミズム政府経済見通し

政府が13年12月に閣議了解した「平成26年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」によれば、14年度の実質GDP成長率は1.4%となり、今年度の2.6%から大きく下落するものの、プラスの成長率は維持する。

右で述べた理由づけではマイナス成長になるのに、なぜ政府の経済見通しではプラス成長になるのか? それは、設備投資や輸出について、非現実的なほど高い成長率が仮定されているからである。

実質民間企業設備投資の成長率は、13年度の0.4%から、14年度には4.4%に上昇するとされている。このように見通す理由として挙げられているのは、「輸出や生産の増加、企業収益の改善や政策効果等により、設備投資は引き続き増加する」ということだ。しかし、実質設備投資は、13年1~3月期まで3期連続で減少を続けた。4~6月期には比較的高い伸び率になったが、それは住宅駆け込み需要の影響で不動産業における設備投資が増加したからである。消費税が増税されて住宅建設がスローダウンすれば、それは減少する可能性が高い。他方で、製造業の設備投資は減少し続けている。こうした状況を考慮すれば、実質4.4%というのは、あり得ないほど高い値だ。

実質輸出は、14年度において5.4%という同い伸び率を示すとされている。輸出がこのように増加する理由は、「世界経済が緩やかに回復していくこと」だ。しかし、13年7~9月期における実質輸出の増加率は▲2.4%である。その後の輸出数量指数の推移を見ても、増加傾向はうかがえない。今後、対米輸出が増加することはあり得るが、対中輸出の減少には構造的な要因があり、増加に転じるかどうかは、大いに疑問である。

また、政府見通しでは、実質輸入の伸び率が13年度の4.2%から14年度には3.5%に低下するとされているが、その理由は明らかでない。13年7~9月期における実質輸入の増加率は9.2%という非常に高い値だ。実質輸入の伸びはLNG(液化天然ガス)など発電用燃料の輸入によるところが大きく、それは本格的な原発再稼働が実現しない限り、減らない可能性が高い。

設備投資や輸出に関する政府見通しの想定は、全体がプラス成長になるように、無理して成長率を引き上げた結果としか考えられない。これは、「根拠なきオプティミズム」としか言いようがないものだ。

なお、主要民間調査機関の14年度経済見通しにおいても、民間設備投資や輸出が高い伸びを示すとされている。

現実的な想定をすればマイナス成長の可能性が高い

以上で見たように、政府の経済見通しは、設備投資や輸出についての過大な想定に立脚している。そこで、これらを現実的な想定に直すとどうなるだろうか?

政府見通しにおける寄与度は、民間設備投資が0.57%、輸出が0.85%である。したがって、これらの伸び率をゼロとすれば、それだけで、GDP成長率は1.41%ポイントだけ落ちて、ほぼゼロになる。

さらに、駆け込み需要の反動で、住宅投資が減少するのは避けられない。政府見通しでは、14年度における伸び率が▲3.2%とされている。しかし、これで済むかどうかは、大いに疑問である。

13年度の住宅投資は、リーマンショック後の標準からすると、かなり増大している。仮に12年ごろの水準が常態であるとすると、14年度の住宅投資は、13年度に比べて10%ほど減少する可能性がある。また、輸入が政府見通し以上に増加する可能性もある。これらを考慮すると、GDP成長率はもっと落ち込む。住宅投資伸び率を▲10%、輸入伸び率を9.2%とした場合の結果は、約▲0.2%になる(計算の詳細は、『ダイヤモンド・オンライン』連載の「期待バブルが幻滅に変わるとき」を参照)。

仮定の置き方によって結果には若干の差が生じるが、政府見通しが想定する1.4%成長が難しく、実際には、ゼロないしマイナス成長になる可能性が強いのである。

ところで、以上で見たのは実体経済だ。他方で、14年においても、為替レートが株価に大きな影響を与えるだろう。資産価格についての予測は極めて難しいが、円安が続き、株価がさらに高騰する可能性も否定できない。このことから、14年がばら色の年になるように言われることも多い。

しかし、本稿で述べたような実体経済面での落ち込みは、為替レートや株価の動向とは関わりなく生じるものである。そして、われわれの日常生活に影響するのは、株価の動向ではなく、実体経済の動向だ。14年が決して楽観できる年にはならないことに注意する必要がある。

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