米金融緩和縮小よりユーロの勣向か重要

2013年末に、アメリカ金融緩和策の縮小が決定された。アメリカ株式市場はこれを歓迎し、株価が上昇した。日本の株価を追随した。円安がさらに進むとの見方もある。

以下ではこうした動きの背後にある国際的投機資金の動きを分析し、日本経済への影響を考えることとしたい。

ユーロ危機が顕在化して以降の先進国経済の動きは、大きく、①11年4月ごろから12年7~9月ごろまでと、②12年7~9月ごろ以降とに分けることができる。

①は、ユーロ危機が進行し、投機資金が南欧国債から逃避して米独日国債に流入した時期だ(この動きは、「リスクオフ」と呼ばれた)。これによび南欧国債の利回りが上昇し、米独日国債の利回りが歴史的な水準にまで低下した。為替レートではユーロ安が進んだ。なお、この期間中の12年1~3月には、ギリシャ支援策の成立を反映して、右の動きが一時的に逆転した。

②は、ユーロ危機が沈静化したと考えられる期間である。これをもたらしたのは、12年9月の欧州中央銀行(ECB)による南欧国債購入の決定である。なお、12年9月に欧州安定メカニズム(ESM)条約が発効しており、これにより、5000億ユーロ(6850億ドル)まで融資可能となった。これは、12年におけるユーロ圏GDPの合計額12.2兆ドルの5.6%に相当する大規模なものである。こうした措置によって南欧国債の利回りが低下し、米独日国債の利回りが上昇した。南欧国債の最近の利回りは、ユーロ危機勃発前の水準にまで戻っている。

為替レートの動きは、ほぼ右の事態に沿って変動している。すなわち、11年4月以降は、ドルや円に対して、ユーロ安が進行した。そして、12年7月ごろに最安値となった。

それ以降は、ユーロが増価している。12年7月以降、ユーロはドルに対しても円に対しても増価したが、円に対する増価率のほうが高かったため、円はドルに対しても減価した(以上についての詳細なデータは、『ダイヤモンド・オンライン』「期待バブルが幻滅に変わるとき」を参照)。

日本では、12年秋からの円安によって輸出産業の利益が増加し、株高が進行した。注意しなければならないのは、これまでの説明から明らかなように、円安は安倍晋三内閣の経済政策によって実現したのではなく、ユーロ情勢の変化と、それに伴う世界的な投機資金の動きによって引き起こされたということだ。

14年においても、為替レートは日本経済に大きな影響を与えるだろう。しかし、為替レートが日本の政策というより海外の要因で動くという事態は、変わらない。したがって、ユーロ情勢の変化やアメリカの金融緩和政策について注視することが必要だ。

QE3の本当の目的は金利抑制だったのか?

アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、12年9月にQE3と呼ばれる量的金融緩和政策を導入した。これは、住宅ローン担保証券(MBS)を購入する政策だ。12月には、購入対象に長期国債も加えた。

QE3がなぜ必要とされたのかは、はっきりしない。期限の定めはなく、「雇用情勢が改善するまで継続する」とされたので、表向きは雇用情勢改善が目的だった。しかし、企業の利益はすでに増加しており、金融緩和がそれ以上に雇用を改善できるとは考えられないので、これは表面上の理由だとしか考えられない。

本当の目的は、金利高騰抑制だったのではないだろうか? 導入当時、アメリカの長期金利はすでに未曽有の低水準に達しており、11年夏ごろから実質金利はマイナスだったから、それ以上の引き下げは必要なかったとも言える。

しかし、ECBが緩和策を取ったことから、それへの対抗策が必要と考えられた可能性がある。ECBの国債購入策によって国際的投機資金がアメリカから流出してユーロ圏に回帰してしまうと、アメリカの金利が上昇してしまう恐れがある。そうなると、アメリカの景気回復に水が差される。それを抑えるためだったのではないだろうか。その意味では、QE3は国際的な金融緩和競争の一環だった。

実際、QEの導入後も、アメリカの金利は上昇した(10年国債利回りは、12年9月には1.7%程度だったが、13年3月には2%を超えた)。そして、13年5月に緩和縮小の予想が広まったときには、急上昇した(10年国債利回りは、9月初めに3%近くになった)。これらから考えると、アメリカ景気回復による金利上昇圧力は強く、それを抑えるためにQE3が行われ、ある程度の効果を発揮したと言えるかもしれない。

なお、類似のことが日本についても言える。公共事業の拡大のために国債発行を増額する必要があるが、それによる金利高騰を抑える必要がある。異次元金融緩和措置の本当の目的は、国債購入そのもの――財政ファイナンス――である可能性が高い。

ユーロ危機が再燃する可能性は否定できない

FRBが13年12月に決定したのは、資産購入額を従来の月額850億ドルから750億ドルへ減額するということである(金融緩和策の縮小は、「テイパリング」と呼ばれる)。

縮小の規模はわずかなので、これは「縮小」というよりも「緩和の継続」と解釈できる。今後についても、経済指標の動向を見て対処するとしており、テイパリングの具体的なタイミングは示されていない。

FRBの決定に対してアメリカの株価が上昇し、「これまでの不透明感が払拭され、リスクオンの様相が強まったため」と説明されたが、市場は「縮小」よりは「緩和を基本的には継続」と受け止めたのだろう。

ただし、金利は上昇を続けた。13年10月末には2.5%程度だった10年国債利回りは、13年12月末には3%を超えた。09~10年ごろには3.5~4%程度だったので、それに比べれば、まだ上昇の余地はあるかもしれない。

そうであっても、日米間の金利がリーマンショック前ほど開くことはないだろう。円安が進展するには円キャリー取引が生じる必要があり、そのためには金利差がかなり開かなければならない。QE3の縮小は、金利には影響を与えても、為替レートに影響するほど金利差が開くかどうかは疑問である。

他方で、先に述べたように、南欧国債利回りはユー口危機勃発前の水準に戻っている。09年ごろは、アメリカMBSや原油、商品から逃避した資金が南欧国債に回り、バブル的な状態を呈していたことを考えると、南欧国債利回りがこれ以上に低下するとは考えにくい。したがって、為替レートも、これ以上ユーロ高にはならないだろう。

実際には、その逆の事態が発生する可能性がある。なぜなら、ユーロ危機は完仝に収束したとは言えないからだ。現在の沈静化は、ドイツが南欧を支えるという基本構造によるものだ。しかし、これがいつまで続くかわからない。したがって、現状は一時的な沈静化である可能性が強い。

他方で、スペイン国内銀行全体の貸出残高に占める不良債権の割合は13年9月に過去最高を更新した。こうした状況を考えると、ユーロ危機再燃の可能性は否定できない。再燃すれば、再びユーロ圏からの資金流出が起こり、円高になる。14年の日本経済の動向を左右するのはユーロ情勢だと考えられる。

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