欠損法人の配当がもたらすゆがみ

法人税論議において、課税ベースを広げることによって法人税率を下げるべきだとの議論がある。その一環として、配当の益金不算入措置の見直しが問題になっている。私は見直しに賛成だ。

この措置は、特別措置ではなく、法人税制の本来の措置である。それが必要とされる理由として、次のような説明がなされる。

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法人税率に関する最重要論点は何か

法人税率論議の中で、「法人税のパラドックス」に言及されることがある。これは、EU諸国で法人税率を下げたにもかかわらず、法人税収が目立って減少しなかった現象を指す。これについて、次の3点を述べたい。

第1は、こうした現象が生じた原因だ。これについては、幾つかの実証研究があり、それによれば、EU諸国においては、個人企業の法人成りによる法人部門への所得シフトが最も大きな要因であったとされている。こうした現象は、日本では働かないはずだ。なお、『経済財政白書』(平成22年度版)は、OECD諸国全体についても実効税率と法人税収の間に負の相関関係を確認できるが、その背景として、課税ベースの拡大や法人部門への所得シフトなどが指摘されているとしている。

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国債の貨幣化はどこまで続くか?

国債の残高は増え続けているので常識的に考えると、利回りが上昇するはずだ。そうなれば、国債の市中消化は難しくなる。そのため、増税や歳出削減を行わざるを得なくなる。つまり、歳出を国債で賄っていたとしても、際限なく財政赤字を拡大できるわけではなく、それを抑制するよすなメカニズムが働くはずだ。

ところが、日本の現実を見ると、そうはなっていない。国債の利回りは、上昇していない。それどころか、低下を続けている。

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新しい技術の意義は過小評価される

前回述べたように、経済学者や投資家、経営者は、ビットコインに対して否定的だ。

これを見ていると、インターネットが普及し始めたころのことを思い出す。FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の元議長アラン・グリーンスパンの回想録『波乱の時代』には、ビル・クリントン大統領がIT革命に期待を寄せ過ぎているので、当時の財務次官口ーレンス・サマーズが懸念していたと記されている。

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重要なのは基本構造ビットコイン改善提案

ゴールドマン・サックスは、3月11日に発表したビットコインに関する報告書の中で、「ビットコインは通貨ではない。その信奉者は頭を冷やして出直すべきだ」と述べた。この報告が問題視しているのは、ビットコインの価格変動が激しく、価値保存手段として適切でないことだ。

ノーベル経済学賞受賞者のロバート・シラーも、ビットコインの価格変動を問題にしている。今年1月のダボス会議で、ビットコインは典型的なバブルであると論じた。3月1日の「二ユーヨーク・タイムズ」への寄稿で、バブルだとの認識を繰り返し述べ、代替案を示した。それは、商品価値にリンクしたデジタルマネーだ。

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ハイエクの理想が現実化しつつある

フリードリッヒ・フォンハハイエクは、1976年に刊行したDenationalisation of Money(『貨幣の非国家化』)において、貨幣発行の自由化を主張した(本書の90年版は、Ludwig von Mises Instituteがウェブに公開しているので、全文を読むことができる。以下、ページ数は90年版)。

インターネット上に登場しつつあるビットコイン等の仮想通貨を、ハイエクの考えと関連づけてみることとしたい。

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ビットコインが持つ経済価値はどの程度か

昨年12月に、バンク・オブ・アメリカ=メリルリンチは、ビットコインに関するレポート(以下、「BAレポート」)を公表した。大手金融機関による最初のレポートであり、しかも、ビットコインの経済価値についての定量的な分析なので、興味深い。

ビットコインをめぐる日本での議論は、「怪しげなもの」「そもそもこのようなものが機能するのか?」という段階にとどまっている。しかし、アメリカ金融業界での議論は、すでに、役割の大きさに関する定量的な検討にまで至っているのだ。こうしたレポートが出されるのは、金融機関がビットコインの存在を無視し得なくなったことの反映と考えることができるだろう。

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ビットコインは地球通貨の夢を見るか?

ビットコインを用いれば、地球上どこへでも、ほぼゼロのコストで送金できる。このことの意味は極めて大きい。これによってどのような変化が生じるだろうか? 三つの段階に分けて考えてみよう。

第1段階は、貿易決済通貨としての利用である。現在の貿易決済では、信用状決済の場合はその手数料が、銀行送金の場合には送金手数料などがかかる。ビットコインを用いれば、この部分のコストはほぼゼロになる。現実のコストで大きな比重を占めるのは、為替スプレッド(買値と売値の差)だ。ビットコインを使えば外貨に交換する必要はないので、この部分もゼロになる。

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ビットコインに関して政府がなすべきこと

ビットコインについて、「騒ぎ過ぎ」と、「騒がな過ぎ」が見られる。ビットコインの外にある一両替所の閉鎖を大々的に報じるのは、明らかに「騒ぎ過ぎ」だ。しかし、「騒がな過ぎ」もある。それは、ビットコインが社会に与え得るインパクトの巨大さが認識されていないことだ。

麻生太郎財務大臣は、2月28日、「こんなものは長くは続かないと思っていた。どこかで破綻すると思っていた」と述べた。「こんなもの」とは、文脈からして、マウント・ゴックスではなくビットコインそのものだ。この発言からは、税制など国の基幹制度が深刻な挑戦を受けているという危機意識は、みじんも感じられない。「ノンキ」としか言いようがない。

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